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彌眞は疑問に思う。
(では、何故、卑弥呼様は私達の鏡片を回収しなかったのだ)
疑問を夜邪狗に聞いた。
「この鏡片は邪馬台国に重要なものですよね。何故、卑弥呼様は私達から鏡を集めようとしないのですか」
「まだ四つすべてが集まっていない、鏡は一つになってこそだ。今はお前達の元にあった方がいい」
彼は即座に答えた。
「それは・・・どういう」
「いずれ分かる」
夜邪狗はその話を手で振って終わりにすると、
「ところで彌眞よ。伊声耆殿は健在か」
彌眞はその言葉に懐かしさを感じる。
「祖父をご存じで」
「知らないでか。共に海を渡った友だ。お前が伊声耆殿の孫だったとは、成程、そういえば面影があるのう」
夜邪狗は破顔する。
(夜邪狗と伊声耆は「魏志倭人伝」の記述によると、正始四年、卑弥呼の使者として魏に赴いている。時系列に多少の矛盾が生じているが、そこは小説、ご理解いただきたい)
「そうか、そうか、で、伊声耆殿は息災か」
彌眞は表情を曇らせる。
その表情で伊声耆がこの世にいないことを悟った夜邪狗は手を振る。
「いや、いい、お前の顔で分かった。そうか、私も年だからな、そうであろうな」
夜邪狗は小さな溜息をつくと、目を閉じ泣き伊声耆を思う。
それから、
「お前には頑張ってもらわないとな。祖父に負けぬよう励めよ」
「はい」
夜邪狗に祖父と似た強い親しみを感じた彌眞は、新たな決意を持ち力強く返事をした。




