表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/108

73 十二、束の間の凱旋

 十二、束の間の凱旋


 余波は先頭で一人、気勢をあげ歩いていく。

 重傷を負った男を年長者と采乎が肩を貸し、ゆっくりと歩く。

 彌眞はもう一人の物言わぬ男の死体を担いで行く。

 十六夜は、最後尾を疲労困憊でうなだれ続いている。


 遅々として、ようやく三日をかけて弥奴国へ到着した。


 弥奴国の門をくぐるなり、余波はこれ見よがしに鏡片を掲げて、民達の前を通り過ぎていき、意気揚々と居館へと戻った。

 待ち焦がれていた母からは、手厚くもてなされ、小さな子をあやす様に褒められ、ますます気分をよくしている。


「母上、私はやりましたよ。ついに真の王となったのです」


「余波、よくぞ無事に帰ってきました。さすがは偉大なる王の息子です」


 母は涙を流し感極まり、嗚咽する。


 そんな二人を、彌眞はつい白けた目で見てしまう。

 彼はゆっくりと男の遺体を降ろし、彼を悼む。

 年長者と采乎は無言で苦しむ男を横たわせる。

 十六夜はその場にしゃがみ込むと、ぐったりと倒れる。


(こんな現状を見て、まともに喜ぶだなんて・・・)


 彌眞は思わず睨みつけたくなるのを押し殺し、わざと、どかっと音を立て、腰をおろし、視線を床へむける。

 年長者は申し訳そうに頭をさげる。

 彼は慌てて手を振る。

 采乎は呆れ果て、大きく首を振り、男に励ましの言葉をかける。

 十六夜は床に身体を横たえたまま、動こうとはしない。


 そんな状況すら気づけない余波親子は、今までの経緯を長々と自分の手柄にして喋る彼に、母は愛おしい眼差しを送り、二人の世界を作り上げていく。


「見てください。母上、この鏡を私が手に入れたのです」

 

 力強く右手に鏡片を持ち、母の目の前に見せる。

 母は目を丸くし歓喜する。


「これはまさに白虎の鏡、ああ、本当にあなた様はやり遂げたのですね」


「勿論です。私は父上の試練に打ち勝ったのです」


 母は余波の両肩に両手を置くと、じっと彼の瞳を見つめると、ゆっくり強く抱きしめる。


「ああ、本当の王となったのならば、民に一刻も早く知らさなければなりません。盛大に宴を開き、新しい王の誕生を祝いましょう」


「ありがとうございます。母上」


 母はしばし、成長したと信じる愛おしい息子を抱きしめていたが、ようやく名残惜しそうに離れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ