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十六夜は不安げに女王を見上げる。母は十六夜を優しく見つめて頷く。
「恐れることはありません」
羨道を進む。十六夜は長い間、この道を歩き続けたと感じたが、実際は百歩程しかない。狭い石の道の圧迫感が感覚を狂わせるのだ。
少しずつ疲労感を感じだした。後、不意にその場がひらけた。
陽の光が差し込んでおり、大木がそびえたっていた。
二人は巨木に近づく。
巨木の幹に人影が見える。
女王は立ち止まり、嗚咽した。瞳からは止めどなく涙が流れる。
十六夜は分かった。その人物が祖母であり、前女王だということを。
どれだけの時間が経ったのだろうか、そっと十六夜の髪に触れ、優しく撫でる女王。その表情は落ち着いていた。
「十六夜、おばあさまです」
「はい」
しっかりとした声で十六夜は答え、大きく頷く。
「さぁ、行きなさい。おばあさまにあなたが女王であることを認めてもらうのです」
十六夜はしっかりとした足取りで、静かに眠る祖母のもとへ歩いた。