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同じ頃、彌眞達も背振山中を突き進んでいた。
先頭は森に慣れていて、知り尽くしている十六夜が山を駆ける。
間に采乎、後尾に弓を持ち構え、いかなる状況にも対応出来るよう彌眞が続いている。
十六夜は山中の危険な場所を次々と回避しつつ進んでいく。
二人はしっかり後に続く。
はるか先にすすんでいる余波達に、何とか追いつこうと駆け抜ける。
少しずつ差が開く。
「こっち」
十六夜は二人に指で指し示して走る。
彼女は森や木々に異変を感じ先へ先へと進む。
途中、遅れる二人を待ち、追いつくと跳ねるように走って行く。
十六夜は足を進める度に、木々たちから異様な気配と恐怖を感じ取る。
(きっとこの先に、余波様達がいる)
確信を持った十六夜は、知らぬうちに全力で駆けていた。
(急がないと)
と思う度に、差が開く二人に、
「早く」
声をかけるが、慣れない二人の事を思い直すと、
「がんばって」
と、励まし、軽々と急勾配の山腹登る。
「さすがですね、十六夜様は」
采乎は滴る汗を拭い、先へと進む十六夜を見上げる。
「こっちも急がないと」
彌眞は思いっきり息を吸い込み、自分を奮い立たせ、がむしゃらに駆けのぼる。
が、すぐに疲れてしまい肩で息をし、膝に両手を置き俯く。
「無理をするから」
抜かれた采乎が追いつく。
十六夜は先へ先へと山を登っていくが、突然見えぬ恐怖に襲われ胸を押さえる。
不安げに眼下の二人を見るが、思い直ししっかりと正面を見据え進む。
(この近くにいる)
胸の高鳴りが大きくなり十六夜は、彼らがすぐ近くにいるのを感じていた。
眼下の二人は追いつきそうもない。
彼女は深呼吸をする。
額の汗も拭おうとせず、覚悟を決め、木々の茂みを払いその場に出た。




