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「私がこのクニを継承することとなっても、おばあさまは何度もこの話を私に聞かせました。しかし、私はそんな事はありえないと思っていました。おばあさま達が必死に築きあげた長き平和を誰も壊そうと考えるなんてないと思っていたからです。しかし、風の便りで聞く大国狗奴国の不穏な動き、そして邪馬台国の使者、彌眞殿、森の風の異常」
十六夜は女王を見つめ頷いた。
「最早、卑弥呼様の予言は現実のものとなろうとしています。鏡の一片は、いまもおばあさまが持っています。いいですか十六夜、あなたはおばあさまに認めていただかなくてはなりません」
「おばあさまは神となられたのでは」
「それはあなたが感じて決める事です」
母は女王たちが眠る塚に、静かに祈るような眼差しをむけ、十六夜の手をしっかり握りしめた。
「さぁ、行きましょう」
十六夜の手を引き塚へと進む。何の躊躇いもなく真っすぐと。
二人が塚に触れた瞬間、不思議なことに、生い茂っていた草、木、蔓が軟らかくなり、進入を妨げないよう、道が出来る。
それは二人を導こうとしている。
十六夜はその不思議な光景に驚いた。
「これは」
「おばあさまが待っているのです」
二人が奥へ入って行くと、途中から石造りの道(羨道)となる。十六夜は塚の内部が外に比べひんやりしているのを感じた。
石の道は二人がようやく並んで歩けるくらいだが、天井はかなり高い。先に進むほど冷気は増し、十六夜は厳粛と気持ちになる。それから体の力が抜けるような不思議な感覚におそわれた。