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余波はひとしきり暴れまわった後、床に伏せたまま急に笑い出した。
「ひゃっ、ははははは!もう許さん、絶対に許さん」
余波の怒り狂った声に、ゾッとしながらも彌眞は彼の前に進み出る。
「どうか、落ち着いてください」
「なにを、なにをだっ!お前たちも同罪だ。私・・・弥奴国王に背き事、万死に値する。覚悟しろ・・・覚悟しーろーよー!うりゅゅゅあっ」
余波は金切り声をあげると、力一杯に柏手を打つ。
「もう、鏡片のことなど、どうでもよいわ!」
怒りで我を忘れた余波は再び狂ったように笑う。
「あなたは、自分のクニが、邪馬台国がどうなってもよいのですか」
十六夜の呼びかけに、余波の笑いが止まる。
余波は彼女の声に思案する。
しかし、部屋の中に先程の三人組、弥奴国の兵が三人を取り囲むと優位さ心強さもあって、年長者に命じる。
「あの者どもを殺せ」
「えっ」
年長者は言葉を失うが、なんとか余波を諫めようとする。
「あの方々は王が探し求めていた者達ですぞ・・・それに邪馬台国の正規の使者であります」
「それがどうした!私を侮辱し逆らった」
「しかし」
「私のいう事が聞けぬというのか!」
余波は声を荒げ、全兵士達に言う。
兵士たちは互いの顔を見合わせ困惑する。
王の命令は絶対だが、使者に弓を引く事は即、反乱を意味する。
重い空気が辺りを包む。
「どうした、かからぬか!」
余波は兵士達を急かす。
「お前ら!かかれい!」
余波は怒りに任せ叫ぶ。
その下知に覚悟を決めた兵士達は、一斉に三人に飛びかかろうと身構える。




