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 弥奴国に着いたのは翌日の昼さがりだった。

 このクニは邪馬台国の西に位置し、敵国が隣に属していない。

 そのせいもあり、クニ自体に物々しさはない。

 男達三人は目的を全うした誇らしさを漂わせ、堂々とクニの門をくぐった。


 クニの中心にある居館に、彌眞、十六夜、采乎は通された。

 男達はその後ろに座り、神妙な面持ちで王の着座を待っている。


 彌眞と十六夜は片膝をつき姿勢を正し待つが、采乎はその形式に慣れず片膝を立てたり、胡坐を組んだりを繰り返している。

 やがて部屋の入り口から怒号が聞こえる。


「遅い!」


 足の裏を床に叩きつけ威嚇するような大きな音をたて、男が入って来る。


 三人の男たちは身をすくめている。

 男は部屋の奥、首座まで肩をいからせ、足音を響かせながらどっかりと腰をおろす。

 彌眞と十六夜は同時に男の顔を見る。

 

 男は自分達よりも少し年上のように見える。

二十歳前後といったところだろうか、鉄剣を足元に置き、緊張した面持ちで三人を見ている。

 この男が弥奴国の王であろう。


(顔が幼い・・・それに弱弱しい)


 十六夜はすぐにそう思った。

 先程の威圧する声の主が、彼だとはとても思えない。

 王の顔は幼さが残る童顔で、顔や肌は青白く病弱そうに見えている。


「私が弥奴国王、余波である」


 威厳に満ちた声で言うが、顔と発せられる声の差があまりにも激しいので、壁の裏で誰かが余波の代わりに喋っているのではと疑いたくなるほどだ。

 余波はひとつ息を吸い込むと、大声で矢継ぎ早に喋りはじめる。


「遅い!遅いぞ!一体いつまで待たせるつもりだったのだ。もう、戦はすでに始まっておる・・・我らは遅れをとっておるのだぞ。どうしてくれるのだ。女王卑弥呼にどう弁解すればよいのだ!」


 一方的に三人は責められ唖然と言葉を失う。

 その一方、男達三人は自分達の事でないことにほっと胸を撫でおろしていた。

 余波はそれを見逃さない。


「お前たちはいつまで手間を取っていたのだ。もうよい下がれ!」


 いきなり矛先が自分達に向けられ、年長者が弁解しようと口を開く直前に、余波は手で制し、


「もういい」


 と、拒絶され、口を開けたまま、すごすごと退出する。



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