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 彌眞の感覚では、一時間ぐらい経過した頃、ふいに静寂が破られた。

 心地よい鳥のさえずりの声が一変し、驚いて飛び去って行く悲鳴にも似た鳴きと羽根をばたつかせた音が響き渡った。

 突然訪れた喧騒に彌眞は、びくついて上半身を起こす。

 視点の定まらない眼とぼーっとした意識で彼は辺りを見渡す。

 しばらくすると、喧騒はおさまり辺りは元の静寂に包まれた。


(采乎さんが戻ってきたのかな)

 

 彌眞はそう思ったが、彼女はいない。

 隣の十六夜は心地よさそうに寝息をたてている。

 彼は安心したが、念のためしっかり目を覚まそうと思った途端、また睡魔に襲われ、ウトウトしだす。


 その時であった。

 大木の背後からドンという激しい音が聞こえ、木の上から、木の実や小枝おまけに毛虫が落ちてきた。

 咄嗟に彌眞は十六夜に覆いかぶさり彼女を守ろうとする。


「失礼をしました」


 背後で聞き慣れない声がした。

 十六夜はぼんやりと目を覚ます。

 眼前には彌眞の顔がある。

彼は人差し指をたてて彼女に沈黙するようにと合図を送る。

 十六夜は頷く、一方、彌眞が目の前にいることに驚く。


「うー!はい?」


 と、言葉を発してしまい、慌てて口を押える。

 彌眞はしかめっ面の抗議をする。

 彼はゆっくりと十六夜から身体を離すと、背後にいる何者かに備えて身構える。

 すると、また背後から声が、


「お聞きしたいのですが」


 と、さっきの同じ声で、丁寧な言葉が聞こえる。


(敵意はないようだ)


 彌眞はそう思ったが、油断せずに身構え姿勢は崩さない。

 だが、ふと思う。


(もし、私達を襲う気なら、わざわざ起こす必要はない)


 戻りつつある思考で考える。


「まだ、起きられないのですか」

 

 再び大木が揺らされ、二人の目の前に毛虫が落ちてくる。


(こんな回りくどいことしなくても・・・)


「はい」


 業を煮やした十六夜が返事をした。

 彌眞は少しだけ彼女を睨み溜息をつく。


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