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「本来ならあと少し時間をかけ、正式に女王継承の祭祀を行うつもりでしたが、猶予はありません
「先程の使者・・・」
女王はゆっくりと頷き、
「おかあさま・・・あなたのおばあさまの言った通りでした」
「・・・おばあさま」
「ええ、おばあさまはかつて邪馬台国で卑弥呼様に仕えた巫女でした」
十六夜は初めて聞く話に驚いた。今日という一日はなんと目まぐるしいことか。
母は話を続ける。
「卑弥呼様が女王の座につかれた頃、倭国は周辺の国々と争う国の存亡を賭けた時期でした。国内も盤石でなく、祭祀をようやく司りましたが、政治、軍事の者たちには全く軽視されていました。しかし、卑弥呼様はその神力で邪馬台国を治め、国々ことごとくを治めました」
女王はここで一息をつき、墓を見つめる。
「それから卑弥呼様は、統治したクニに信頼すべき人物を派遣し神の力で治めさせました」
「・・・それが」
「そう、おばあさまです。そして卑弥呼様の統率により国々に平和が訪れたのです」
「・・・」
十六夜は静かに母の話を聞いた。
「そのさい、おばあさまに鏡の一片が送られたのです。・・・卑弥呼様の予言とともに」
「予言・・・」
「卑弥呼様は鏡を割って、各国々の信頼出来る人物に破片を配らせました。予言の内容は卑弥呼様の死後、再び倭国は乱れる。その時が訪れたら鏡の一片を持つ者たちは邪馬台国に集えと」
「おかあさま、でも卑弥呼様はご健在のはず」
「そうね、でも卑弥呼様は相当なお年、いつ次の覇権を狙う者が現れてもおかしくない」
女王は深い溜息をついた。