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「では」

 十六夜は長から了解を得た心地になり笑みを浮かべる。

 彼は首を振り否定する。

「あなた方が邪馬台国の使者であることは分かりました。が、中に入れさせることはなりません」

「どうして・・・駄目なのですか」

 彼女の表情は一転する。


 涙を浮かべる彼女の表情に長は困惑し、唸り声をあげ瞑想する。

 それからゆっくりと目を開く。

「その言葉、偽りはないのだな」

 十六夜の顔が明るくなり、大きく頷く。


「では、あなたに真実を問うことにしよう。盟深探湯(くがたち)にて覚悟はよろしいか」

 長は突然、鋭い目つきとなり、十六夜を見つめる。

 彼女も長を見つめ返して、

「はい」

 と決意を伝える。

 長は頷いた。


「分かった。では、こちらに」

 と言い残すと、長は背を向けて歩き出す。

 十六夜は二人の元へ行き、采乎を促すと一緒に彌眞を担ぎ後に続く。

 兵士たちは三人を取り囲みながら、対蘇国の祭祀場へ向かった。


 祭祀場へ着くと、十六夜に清めの儀式が行われる。

対蘇国の巫女達により大きな朱塗りの大甕が運ばれてくる。

並々と水が注がれ、その下に敷き詰められた木々が燃やされる。

火が勢いよく燃え出すと、水が沸騰しはじめた。


十六夜は恐怖で自分の足がすくんでいるのを感じた。

盟深探湯と長から言われ時、彼女は目の前が真っ白となった。

熱湯に腕を入れ真偽を確かめるというこの占いは、火傷をしなければ真実であり、火傷をすれば偽りであるというものだった。


 彼女は母である女王から聞いた話では、どんなに真実であっても、この占いの前では偽りになるといわれている程、分が悪いものだと知っている。

実際、権力者たちはこの占いを使って、邪魔な異分子を排除すると母は語っていた。


十六夜は燃え盛る炎をじっと見据え、自分は正しいと何度も心の中に言い聞かせる。

が、真実が真実でなくなる盟深探湯の法を前にして、心は折れそうになる。

その間にも火の勢いはさらに燃え上がり、蒸気と化した湯気があがりはじめる。

気を失いそうになる自分に、十六夜は守るべき二人を見て、己を奮い立たせる。

采乎は歯を食いしばり、必死の形相で彼女を見つめる。



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