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 十六夜と采乎は彌眞の腕を絡ませて、引きずるようにして運んだ。

 一刻も早くという思いから、二人は昼夜を問わず彼を引いて対蘇国へと向かった。

 そして三日目にしてようやく夕暮れの迫る対蘇国へとたどり着いた。


 すでに対蘇国には、蘇奴国が反乱を起こしたという報が届いており、クニの門には、物々しい警備の兵士が守っていた。

 三人は対蘇国へ入ろうとするが疑われた。

 特に采乎は右腕に蘇奴国生まれの証である入れ墨をしているので、諜報などあらぬ疑いをかけられ、一触即発の雰囲気になった。


「疑わしき者は、通さぬようと言われておる。特に蘇奴国の者がいるとなればなおさらだ」

「だから、私は蘇奴国から逃れてきたのです」

 采乎は兵士にくってかかる。

「信用できぬ。かの国は我らを、そして邪馬台国を裏切ったのだからな」

 兵士の一言に、周りの兵士も同調し頷く。


「では・・私はいいですから、この方達だけでも入れてもらえないでしょうか」

「采乎さん・・・」

「駄目だ」

 采乎は歯ぎしりをし、兵士を押しのけてでも強引に入ろうとする。

 兵士はそうはさせじと身構える。


「采乎さん待って」

 十六夜はそう言うと、彌眞を采乎に預け、兵士たちの前に進み出る。

「怪我人がいるのです。対蘇国に入れて頂けないでしょうか」

「駄目だ」

 おきまりの返事が返って来る。


 十六夜は落ち着いた口調で、

「では、王に会わせてください」

「王はいない、長ならいるが・・・」

 十六夜の懸命の様子に一人の兵士がぼそりと言う。

「では、長に」

「駄目だ」

 と同じ言葉を繰り返す。


 十六夜は埒が明かないので、先程の物分かりのよさそうな兵士の前へ行くと、鏡片を取り出し見せる。

「私たちは邪馬台国の使者です。長に取り次いでくれますか」

 兵士は鏡片をじっと見つめた後、

「分かった。長にたずねてこよう」

 と言い残すと、門の中へ消えて行った。


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