表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/108

41

 彌眞は住居群まで来ると、木の茂みに隠れつつ慎重に進んだ。

 そこは恐るべき惨状の場と化していて戦慄と怒りを覚えた。

 至る所に、傷つき息も絶え絶えの兵士、死体が無数に横たわる。矢の(やじり)が胸に突き刺さって死にゆく女性、足を鉄戈(てつか)で刈られて身動きがとれない男性、泣き叫ぶ子どもたち。阿鼻叫喚の世界。


(これが戦・・・なんという)

 彌眞はこの現状をどう捉えていいか分からなかった。邪馬台国と魏という巨大な後ろ盾を持つ、安全な伊都国で育った彼にとって、目の前に起こっている出来事は信じられない光景だった。

(クニの存亡をかけた戦というのは、こんなにも凄まじいものなのか)

 足の震えが止まらず、身体が重い。

時間の流れが緩やかに感じ、一歩足を進める事すら苦痛に感じる。

彌眞は、この戦がなんであるか見定めるという使命感だけで、クニの中心部へと

一歩ずつ歩く。

 

 ようやくの思いで、集落の中心地にたどり着くと、焼け落ちた住居の影に身を潜ませて辺りの様子をうかがう。

 そこには地獄絵図があった。

 眼前には白兵戦が繰り広げられている。鉄剣がぶつかり合い、鉄矛が兵士の肉を貫き、鉄戈の一閃する風切り音とともに兵士の首が切られる。

 離れた場所では弓兵が火矢を放ち、容赦のない焼き討ちを行っている。

 ひたすら逃げまどうクニの民人達。


 彌眞は恐ろしくて身体が震え続けながらも、その光景から目を逸らすことはなかった。

(・・・目を逸らすな)

 その刹那、彼の耳元に唸りをあげて矢が通り過ぎていく。

矢は通常の三倍の大きさで、次の瞬間には兵士に突き刺さり呻き声をあげて倒れた。


 彼は視線を矢の放たれた方を見る。

その姿に驚愕し、この戦の理由が理解できた。


 視線の先の人物は、軍の先頭に立ち、大弓を投げ捨て鉄矛に持ちかえ突進していく、蘇奴国王蘇邑の姿だった。

 蘇邑の胸元には鏡片があった。

 彼が雄叫びをあげると、兵士たちの鬨の声で大地が揺れ、軍勢は突撃を開始した。


 次々と同じクニである筈の民が無慈悲に殺されていく。

 これは蘇奴国で内乱が起きたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ