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四人は神殿を裏側から抜け駆ける。森の手前までやって来た。ここから先は獣道もなく、だだ木々が陽の光を覆い隠し鬱蒼としている。
女王は十六夜と繋いだ手を離す。それから巫女達にここで待つように伝えると深淵とした森に二人は入って行った。
女王は何も言わず、黙って森の中を進む。十六夜に木々に隠れ、母を見失わないように必死についていく。大きな木の葉が彼女の視界を奪う。葉々の波に飲まれそうになる。瞬間、母の手が十六夜の手を掴む。
揺るぎない女王の瞳は、森の先一点を見つめていた。
二人は長い間、歩き続けた。女王の表情からは先程までの焦燥感はなくなり、その歩みもゆっくりとしっかりとしたものとなった。十六夜も森の雰囲気が変わったことを感じた。さっきと違い落ち着く、二人は手を握りしめなおし森の先へ。
さらに歩き続けると、少しずつ陽が射しはじめてくる。十六夜はいっそうの安心感と温かく優しい何かをかんじるのだった。
「十六夜、なにか感じますか」
「おかあさま、とても心が安らぎます」
「そう」
女王は嬉しそうに微笑み、少しだけ表情を曇らせた。
暗闇がどんどん取り払われていく。
十六夜の不思議な気持ちの高まりが最高潮に達すると、すべての闇が払われた。
彼女の視界にすべての光が注がれた。
目がなじんでくると、ひらけた場所に母と二人立っていた。
目の前には草木や蔓に覆われた大きな塚があった。
十六夜はしばらくきょとんと佇んだ。
「おかあさまここは?」
「私達の魂が行きつく処」
「・・・・・・」
「おばあさま…私のおかあさまたちが眠る場所」
十六夜は女王の言葉でここが女王、祖先の墓であることが分かった。戸惑いを覚える。
「そう。ここは歴代の女王が眠る場所、肉体の死により神となる処そして・・・」
「おかあさま」
「今から女王の継承を行います」
十六夜は魂が稲妻にうたれたような気がした。身の震える思い、母から女王の座を受け継ぐのだ。その瞳に覚悟と決意を宿した。
そんな娘の姿を見て、母は安堵と頼もしさを感じた。