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十六夜は話を続ける。
「私は楼閣の上から景色を眺めて、物思いに耽っていました。そこから蘇奴国を眺めた時、このクニにあなたがいる事を思い出しました。そうしたら私は一人ではない事に気づいたのです」
嬉しそうに話す彼女に、彌眞は今まで自分が何をしていたかということを考える。
(私は今まで自分一人の問題として考えてきた・・・だけど、この件は自分で解決すべきものでは・・・)
彌眞は暗澹とした気持ちになる。
「そう思ったら、急に元気がでて、やらなくてはいけない事を思い出しました。鏡片の事です。王に謁見した時、様子がおかしいと思ったでしょう」
「はい・・・」
彌眞は頷く。
が、自身の思考には薄靄がかかっていて生返事になってしまう。
(十六夜に話すことで楽になるのだろうか・・・)
彼は悩み続ける。
「私は居館の横に宝物殿らしきものを見て、そこに鏡があると思いました」
彌眞は十六夜の話が核心に迫ってきたので、集中し耳を傾けた。
「頃合いを見計らって侵入を試みました」
彼は彼女の大胆さに驚いた。
「見張りの兵士に見つからないように忍び込みましたが、見つかっちゃいました」
「えっ!」
「幸い兵士が一人だったので」
「一人だったので・・・」
思わず彌眞は、十六夜の後に続いた。
「気絶させました」
ことなげもなく言う十六夜に、彌眞は驚き声をあげる。
「どうやって!」
彼女は彼のあまりの大声にきょとんとなったが、自慢げに、
「どうしても入れてくれないので、一旦引き下がって、石を拾って隠し、兵士に鏡片を見せました。兵士が物珍しそうに食いついて見ていたので、石でがつんと」
「・・・がつんと」
「はい」
十六夜はその時を思い出し、頬を染め高揚している。
彌眞は彼女の無鉄砲さに唖然となる。
次第に軽率な行動に対し、怒りが込み上げてくる。
「何故、そんな危ないことをしたのですか!」
と大声をだして叱った。
十六夜は予想外の彌眞の怒りに驚く。
「もしもの事があったらどうするのですか」




