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夕暮れの紅の景色が空全体を包むと、蘇奴国のクニすべてを覆う。

 十六夜は楼閣(やぐら)から、そびえたつ北の大きな山の頂をじっと見ていた。

 溜息をつく。

(私は、以前こんなに溜息をついていただろうか)

 視線を下へと移すと山の裾野に森がある。懐かしさに目を細めると涙がこみあげてくる。

 再び、溜息をつき、そんな自分自身に苦笑いしてしまう。


(私はどうしてしまったんだろう・・・)

 十六夜はしばらく俯いてしまう。

 ふと、視線を朱に染まる森へうつした時、母の面影が脳裏に浮かんで、ぼろぼろと

涙がでてしまう。

(帰りたい・・・)

 彼女はそんな自分にはっとなり、思いを消すように首を何度も振った。


(こんな事じゃ、駄目だ)

 眼下に見える蘇奴国をぼーっと眺める。

(そうだ。彌眞がいる)

 そう思い直すと、心が少しずつ安らいでいく。


「一人じゃない」

 十六夜は呟いた。

(彼もまた悩んでいる)

 と、考えると気も楽になっていく。


 やぐらの縁から顔をだし、夕暮れの風に身を任せ、目を閉じ瞑想していたら、昂っていた気もすっかり落ち着いた。

 すると、彌眞に対して腹が立ってくる。

(私が、落ち込んだのは、彼の態度・・・彌眞の彌眞自身にしか知りえない悩みのせいだ)

 と、心の中でケリをつける。


(やっぱり、私がなんとかしなくては)

 そう思うと元気がでてくる。

 十六夜にある考えが浮かんだ。

「よし!」

 気合を高め、眼下の景色を一瞥し、楼閣の階段を降りていく。



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