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「彌眞、一体どうしたのですか」

 十六夜は強い口調で言う。

「別に」

 彼女の真っすぐな視線に、彼は目を背ける。


「私から目を離しましたね」

「・・・・・・」

 十六夜は意を決して、深呼吸をして言った。

「あの時、なにがあったのですか」

 彼女は心に言おうと決めていた事を口に出したる


「・・・あの時とは?」

 彌眞はとぼけて言う。が、彼女は話を収めない。

「盗賊に襲われた夜の事です」

「・・・何かありましたか」

「私になにかがあったのではなく、あなたになにかがあったはずです」

「わ、私に何かありましたか」

 動揺を隠しながら、彌眞はとぼけ続ける。


「あなたは自分一人の問題として、悩み事を背負いこんでいるようですが、一緒に旅をする私もあなたのその姿を見るのは苦しいのですよ」

「・・・・・・」

「あなたは私が落ち込んでいた時、励ましてくれたじゃないですか。教えてください、あなたの苦しみを」

 十六夜は身じろぎもせず、視線を逸らす彌眞の横顔を見つめている。


「今度は私が・・・」

 そう言ってくれる彼女の視線を痛いほど彼は感じながら、

「もう少し待ってください。いずれ必ず話しますから」

 そう言うと、振り払うように彌眞は駆けだした。

 一人残された十六夜は、彼の小さくなる後ろ姿を見ながら、その場に立ち尽くした。




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