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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
皇帝編

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皇帝初心者とうさみ 24

 真ウーサー六万五千五百三十五世に結界を伝授するのは難しくなかった。


 皇帝月兎は月のウサギのなかでも広範囲に影響を与える技術と相性が良かった。

 それは皇帝という属性のせいかもしれない。


 皇帝は一番偉い。

 偉いということはそれだけ広い範囲に影響力を持っているということだ。


 言葉尻が似ているだけともいうけれど。

 ただ感覚とか普段の意識が習得に影響したとしてもおかしくはない。


 それからも、地下帝国でやっているように大勢で遊……鍛える方法を教えたり、実際にやってみたり、うさみ抜きでやらせてみたり、それらとは全く関係なく遊びまわったりした。


 そして、そういえばあんこ食べたかったんだっけと思い出したうさみの提案により、地上へと帰還する日が決まった。

 本当は思い出したその場であいさつして帰ろうとしたのだが、お別れ会しようとウサギさんたちに引き留められたのだ。


 短期間でずいぶん懐かれたものである。

 散々遊び倒しただけだというのに。

 とはいえ、うさみの場合下手すると人間相手よりウサギさんと接してる時間の方が長いことを思えばこれくらいは妥当かもしれない。




 そのお別れ会の中で、真ウーサー六万五千五百三十五世とうさみが私的な会話をする機会があった。

 臣下のウサギさんたちが飲めや歌えや食べろやわっしょいしている中、最上位席に座ったふたりの周りに他の子がいない空白の時間ができたのである。



 真ウーサー六万五千五百三十五世であっても、スキルを教わっているときにははばかられたような話をする機会。

 真ウーサー六万五千五百三十五世はすこし迷ったが思い切って気になっていたことを話題に出した。



『使者うさみ。興味本位で尋ねるのだが、何か悩み事があるのではないか』


「はいぃ?」


 ものすごい不躾な尋ねようだったので、うさみは眉をひそめて小首をかしげながら何を言い出すんだこの子という感情を前面に出しながら返事をした。


 興味本位て。正直に言えばいいってもんじゃないぞと。


『使者うさみのような強力な個体が、どのような悩みを持っているのか非常に気になるのだ』


 ぐいぐい来る真ウーサー六万五千五百三十五世。

 皇帝らしい傲慢さとでもいえばいいのか。


 というかうさみは悩みと言われてもぱっと思いつかなかった。

 何のことを言っているのか。


「ちょっと思いつかないんだけど」


『先日の戦勝祝いの際に、遠くを見ながらいつもとは異質な顔の造形をしていたであろう?』


 やんわり断っても突っ込んでくるのでうさみはどうしようかと考えた。


 他人だったら無視するところだけれども。

 でもまあ一応弟子みたいなもんだし皇帝陛下だしちょっと考えてみようか。

 うさみの悩みって何さ。


 真ウーサー六万五千五百三十五世の弁を頼りに思い出す。

 そして思い至ったのは、繰り返しの徒労感だった。

 切り替えたので思い出すのになかなか苦労した。


 しかしながら、時間が巻き戻ってて繰り返しているとかそんなことを話しても仕方がないというか、何言ってんだこいつ頭おかしいのかと思われそうな気がする。

 弟子っぽいものにそんな風に思われるのはうさみ的にはちょっとせつない。


 なので適当にごまかして話してみることにした。


「えっと、何回もおんなじことを繰り返しやっているんだけど、上手くいかないのね。まあそれは仕方ないんだけど、その最中助けてくれたり関わったりした人とかがいて。だけどうまくいかないわけで。なんか申し訳ないなあとか。それに、一生懸命手伝ってくれるのに、わたしの方はあきらめてるところもあったりして。そんななのに人ががんばってるところに口を出したりするのもどうなのかなあとか」


 話し始めてみると、思っていたよりもすらすらと口が動いた。

 もしかすると自覚している以上に溜まっていたのかもしれない。


 うさみは自分で喋りながら、自分が感じていることに気が付いた。

 他者に負い目を感じている。


 原因はまあ、いくらでもあるが突き詰めると繰り返しに帰結するのか。


 うさみは新しい発見に首をひねった。

 わたしこんなにめんどくさかったっけ。


 真ウーサー六万五千五百三十五世はそんなうさみを見て聞いて。


『傲慢であるなあ』


 と感想を述べた。

 うさみはそうかもねと思った。


『使者うさみ、傲慢が許される職業を知っているかな』


 真ウーサー六万五千五百三十五世が問う。

 うさみはなんだそれと思いつつ、さっき感じたことを思い出して答えた。


「皇帝とか?」


『うむ』


 真ウーサー六万五千五百三十五世が大きく体を揺らして頷いた。


『皇帝は傲慢であるべき義務と権利があるので傲慢であっても許され、また傲慢でなければならないのだ』


「はあ」


『使者うさみは皇帝か?』


「違うね」


『ならば傲慢でなくともよいのだぞ』


「うん……うん?」


 うさみは首を傾げた。

 今日はなんだか首を傾げまくりである。


 傲慢でなくてもよい。


 よくわからないが、その言葉は不思議とじわじわとうさみにしみ込んでいった。


『ところで話は変わるのだが、あの虹色のニンジンを定期的に用意できないだろうか』


「え? いやできるけど」


 話変わりすぎじゃない?






 その後、うさみは地上へ戻り。

 週一で地下帝国パラウサへ遊びに行く際ついでに、月一程度で月面帝国ルナパラウサにも顔を出すようになった。

 お土産の野菜の取り分で地下帝国と月面帝国で何度も協議されることになったりするのもいつものことだ。


 あと世界が滅びてうさみが死ぬのもいつものことだった。

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