召喚初心者とうさみ りばーすさいどえんど
召喚初心者とうさみ りばーすさいど
召喚を妨害して逆算して移動。メルエールと一日話し合って使い魔のふりをする。
翌日。要注意のワンワソオ少年に遭遇、使い魔戦闘遊戯を挑まれるも怖いのでいやだと断り、先方が驚いている間に逃れる。
メルエールがクラスに溶け込めるようまずはあいさつから。
ウサギ使いの子はチョロいのでねらい目。
子犬使いが要注意リリマリィ。
かわいい使い魔愛好会をつくる。
翌日。勉強会を提案する。
翌日。魔法の朝練を提案する。(要注意)
野菜ジュース準備。竜ちゃんが来るので話しておく。
野菜ジュースはニガマズい奴で!
後日。ワンワソオ少年再来したらリリマリィと話す。(要注意)
あとは流れで。
要注意。
メルエール 甘やかさない。依存させないように気を付ける。
ワンワソオ 思春期。恋愛を意識させるとしばらく行動不能になる。
リリマリィ こわい。敵に回さない。ワンワソオ少年が行動不能の間に告白するよう促す。
エルミーナ お母さん。きもったま。メルエールが逃げ帰っても大丈夫。
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「えーと次は何だっけ。あ、メルちゃんか。今生はこなかったなあ」
うさみはしわしわの手で本をめくっていた。
無限の本。
うさみが作った魔導具だ。
無限に綴じられる上、劣化を防止してくれる、さらに分類、検索機能もついていて重さも本一冊分という便利なものである。
うさみはこれに一生分のメモを放り込んでいた。
「もうすぐ時間かあ」
金色の長い髪は短く刈り揃えられ、白いものが多く混じっている。
ぷにぷにしていた顔にもしわが刻まれていた。
うさみは千年で死ぬ。
残り時間が少なくなると、具体的には数十年前から老化が始まる。
千年近く全く変わらなかった外見がかわるのだ。
うさみおばあちゃんである。
聞けばエルフは大体そうだという。
人によっては醜く老化する前に木に化身するのだとか。
なんか怖いのでうさみはやったことがないが。
おばあちゃんが醜いとも思わないし。
さて、うさみおばあちゃんは今、一生を振り返っていた。
次の生に向けての準備である。
もしかしたら次なんてないかもしれないけど。
今までの実績上次がある可能性が高いものだから、だったらまあ準備くらいしておくものだ。
準備と言っても、モノを用意するわけではない。
次の生に持っていけるのはうさみの記憶だけである。
ゲームでノーセーブクリアして最初からする感じである。
強くてニューゲームではないのだ。ふつうにニューゲーム。
精神的にも当時感覚に近くなる。
以前の記憶は薄幕がかかったようになり、千年で遠いものとなったゲーム時代、地球時代の記憶がよみがえる。
そして若さを取り戻すのだ。なんかこう、フレッシュ? まあその元気な感じ。
そんなものだから、準備というと大事なことを思い出しておくこと、ということになる。
例えば研究中の魔法の細かいところ。
例えば鍛えなおす手順。
例えば野菜の品種改良のコツ。
例えば料理のレシピ。
例えば気にしている元知り合いのこと。
などなどなど。
改めて確認し、覚えて、時間跳躍後にあらためてメモするのである。
「メモも一緒に戻れたらいいんだけどねえ」
本から顔を離して目を細めながらつぶやくうさみおばあちゃん。
「拡大鏡機能も付けたほうがいいかな……眼鏡の方が安くつくか」
あと無限の本に機能を付けても無限の本に綴じた分しか見えないけれど眼鏡なら何でもイケる。
とはいえ作るのが面倒だ。
レンズ磨きはまあまあ気を使う。
歳を取って精密作業が苦手になったうさみおばあちゃんには、なかなかの重労働だった。
なので若返った。
「あー体が軽いし関節が痛くない」
ぷにぷにのほっぺを取り戻したうさみはおばあちゃんではなくなった。
肩をぐるんぐるん回して調子を確かめる。
絶好調である。
「えっと、時間の壁の突破と、拡大鏡とー。拡大鏡って元気な時は使わないから作るとき忘れるんだよねー」
こうして元気になったうさみは無限の本の設計メモに手を加えていくのだった。
なお肉体が若返っても千年で死ぬ。ふしぎ。
今生のうさみは、時間を忘れて無限の本の再設計をしている最中に死んだ。