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使い魔?うさみのご主人様 6α さーどえくすぺくと 2

 魔術の講義をご主人様(メルエール)のよこで聞いていて再認識したことがある。

 人間は利用可能なリソースの中でやりくりするために知恵を絞るものだと。


 この世界はゲームの世界とよく似ている。

 ゲームの世界はファンタジーものVRMMORPGだったので、地球の物理法則にに魔法を足したような世界だった。

 つまりこの世界は地球にも似ている。

 似ているだけで厳密には違う部分も多いのだが、感覚的には同じようなふるまいをする。

 地球にはレベルもスキルもクラスも、魔法も魔力もなかった。少なくとも知られていなかった。

 ゲームではお腹が減らなかったり死んでも生き返ることができた。


 この世界ではレベルとスキルとクラスと魔法と魔力があって、お腹がすいて死んだら戻る。

 もしかしたら寿命以外で死んだら戻らないかもしれないけれど試してないからわからない。自殺とか怖いし。

 “本物そっくり”だったNPCは“本物”の人間となり、自分の人生を歩んでいる。


 似ているようで違う、違うようで似ている。そんな部分が各所で見られ、当初は振り回されたこともあったが、いつしかうさみは“この世界”に慣れていた。



 さて、ゲーム時代の魔法とこの世界の魔法は近似している。

 広く使われている魔法はおおむね共通で、自分で魔法を作ることができるのも似ている。

 ただ、ゲームシステムのサポートが得られない。

 そのかわり、世界の仕様、スキルやクラスによって、過去のだれかの技や力を再現できる。


 ただ何も考えずやみくもにこうありたいと望み行動するだけでも相応の力を獲得できる。

 相応の力とは生きていくのに必要十分なもの。

 それ以上を目指すものはあまりいない。そういったものがいつか英雄になったりするわけだが、それはそれで語り継がれるほど珍しいというわけだ。


 ゲーム時代の尺度を使ってこの世界を数値化したことがある。

 世界最強の生物、星降り山の災厄、星光竜がレベル二百五十五。

 世界で最も深い迷宮の主がレベル二百二十くらい。

 普通の人類の上限が実質的にレベル百。

 ちなみにうさみはレベル一だ。


 人類弱くね? と思うが、まあその通りで、人類圏はあまり広くない。

 それはそれとして比較対象が最強クラスであるのが悪いのだが。


 人類圏の最前線ではレベル百くらいの者が、クラスとスキルも同程度に鍛え上げ、相応の装備をしてレベル百くらいの魔物と戦える。

 おもに装備がそれ以上の相手には保たないため、素材なり技術なりのブレイクスルーが必要な状況で、人類と魔物の生存競争は停滞していた。


 そんな人類に厳しい世界だが、そこまでひどくない場所もある。


 海や山脈で隔てられ、多数の地方に分かれているせいか、魔物の分布も偏りがあるのだ。

 魔術王国サモンサがある地域はあまり魔物が強くない。

 強いものがレベル二十といったところだ。


 ものすごくたくさん殺しまくっても、殺した相手よりわずかに高い程度のレベルにしかならないので、つまりこの辺りの人は強くてレベル二十強である。

 保有魔力、ゲームで言う最大MPはレベルに大きく依存する。

 ざっくりと戦闘力としてみるとレベル、クラス、スキルは三本柱で同じくらいの重要度なのだが、最大MPだけを見るならレベルの高さの影響度が大きいのだ。

 レベル二十ちょっとくらいだと、レベル百の人と比べて下手をすると五十倍から違ってくる。

 幅があるのは魔導具やらで補助できるためだ。


 ようやく本題に戻る。

 たとえば、MPが百とか二百の人と、五千とかの人が同じように魔法を使うだろうか。

 答えはもちろん否で、五千の人の方が取れる選択肢は多いし、見込める最大効果も当然大きくなる。

 消費が二百の魔法と五千の魔法では同じ方向性のものであっても、威力が大きく違ってくるのは当たり前である。

 二百の人は二百の魔法を一回しか使えないが、五千の人は二十五回使える。

 こうなると、魔法使いの運用からして変わってくるわけである。


 このように、並べて比較すると魔力が少ないと残念なようにしか見えない。

 しかし、それが基本的な水準であればどうだろうか。

 MP二百が当たり前だとしたら、その範囲内で活用する工夫をするものだ。

 そういうところに、うさみからみても思わぬ発見があったりするかもしれない。

 もちろん陳腐化していて役に立たない技術も多いわけだけれども。

 それでもそこまで馬鹿にしたものでもないものだ、と再認識したわけである。


 ずいぶん上から目線であるが、こと魔力の扱いに関しては、うさみも長らく研究してきて一家言あるのである。

 とくに、ゲーム時代に(ゲーム内の)命がけで、そして友達と一緒に考えて体得した技と、何度も人生を繰り返しながら暇に飽かせた研究時間は、凡人の身であってもそれなりに重いと自負しているのだった。



 まあそれはさておき、この国の魔法、いや魔術と呼ばれているそれには触らない方向で行こうと決めた。

 得るところが全くないわけではない。

 でも少ない。

 うっかりすると粛清するために武装した部隊がやってくるし。


 そうなるとメルエールの立場をどうしていくかという問題になるわけだが。

 うさみは魔力が有効でない局面では弱点が多い。

 見た目で舐められるし暴力は社会を相手にすると不利に働くことが多いしエルフはここでは異物だし。


 落としどころだよね。


 貴族社会に残るのが幸せだろうか。

 他の道もないわけじゃない。

 本人は大変そうで、実母たるエルミーナお母さんも向いてなさそうという判断をしていた。

 とはいえ大変なのも、後になってみるといい思い出になるものだ。

 難しい問題である。


 うさみはしばらく考えて、可能性だけ残してメルエールに丸投げすることに決めた。

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