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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
召喚編

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編外:とあるうさみの一日

 うさみは大体一般人である。

 “大体”の範囲外にあるのは、異世界転移転生時間跳躍者であることくらいで、それ以外は凡人だ。


 というのがうさみ自身の認識である。

 なにか技術を身に着けようにも、スキルを使わなければ何年何十年と時間がかかるし、時々いる天才をみるとすごいなあうらやましいなあと思う。

 一人暮らしはたまに寂しくなるけれど、人の中で暮らすのも別れがつらくなる。

 引きこもったり人里で暮らしたりを数十年くらいの周期で繰り返すのも凡人らしさの顕れだ。


 ――と本人は思っているが、実際にはやはりそうではない。

 根が地球人類であり、エルフの寿命を持ち、何度も生を繰り返す。

 そんな存在はただいるだけで凡庸とは程遠い。


 今日はそんな異常者うさみの一日を追ってみよう。




 朝。

 日の出前に目を覚ます。

 竹を編んで作った寝台には綿を詰めた敷布団とそば殻の枕、それとタオルケットが二枚。一枚はシーツ代わり、一枚は掛布団代わりだ。

 この辺りは常春なのでこれで十分。

 う~んと背伸びをした後、軽くストレッチをしてから、着替えを取って部屋を出る。


 向かうはもちろんシャワー室。

 寝起きシャワーは気持ちがいいし目が覚める。

 わざわざ魔法を使わなくてもいいように魔導具を作って設置してある。

 寝起きとか疲れているときに使うことが多いので、ちょっと楽をしたいもの。


 パジャマ代わりのシャツとぱんつを脱ぎ捨てて、シャワーを浴びる。きもちいい。

 じゃばじゃばしながら今日のことを考える。

 どんな髪型にしようかなと。

 ツインドリル……いやいやあれは面倒だし。おさげでいいかなあ。いやいっそ盛っちゃうかなあ。でも面倒だし。

 お尻まである長い金髪は場合によっては煩わしいのだが、切ってしまうとなんだか物寂しかったので我慢して付き合っている。


 寝汗を流して髪の手入れをしたら【髪を乾かす魔法】を使いながら髪形を整える。

 結局今日はポニーテールにした。髪の量が多いのでなかなか太い。

 最後にお気に入りのヘアバンドを付けて完成だ。


 それから甚平風の野良着を身に着け、昨日の残りを温めなおして朝ごはん。


 そのあとサンダルを長靴に履きかえて、魔法をかけていざ出陣。




 広大な農地は森の中にあるうさみのおうちを中心に広がっている。

 自分で世話をできる範囲の限界まで開墾しているので、結構広い。


 草をむしってむしってむしってむしってむしる。

 草をむしってもレベルは上がらない。

 上がっていたら農家の皆さんはみんな高レベルであろう。


「エールフはやさーいーざっそうはげきめつーまちがえてひっこぬいてたいへんだー」


 エルフを訪ねて以降に腹いせに作ってからというもの、お気に入りの歌を歌いながら農作業をする。

 大体草むしり。

 やはり草むしりが一番長い。

 十分にむしった後それ以外のことをする。

 耕したり植えたり収穫したり。水やりも肉体だけだと重労働だが、【水やりの魔法】で川から雨のようにぶわっとやるのでそれほどでもない。

 野菜など、ちょっとずつずらして植えているので毎日のように収穫できる。常春だもの。


 食べ時のものを収穫。

 たまにかじる。

 顔がほころぶ。

 昔は野菜はあまり好きではなかったけれど、エルフになったせいか、それとも自分で作っているせいか、おいしく感じるようになった。


 最近は寒暖の差が激しいほうがおいしくなるという種類の野菜をどうやって育てたらいいか検討している。

 二周前の拠点はいい感じだった気がする。

 魔法で調整してもいい。ビニールハウスみたいな。でも天然物の方がおいしい感がある。気のせいかもしれない。


 一番いいところは残して次の種にするので、次点くらいのを自分用に収穫し、残りをウサギさん用に運ぶ。

 運ぶ運ぶ運ぶ。

 魔法で運んでもいいのだけれど、疲れるまでは自分で運ぶことにしている。

 適度に運動しないと体がなまるし、やっぱり収穫物を運んでいる時間は幸せだ。収穫物を食べているときと、料理しているときの次くらいに。



 そうしていると大体日が陰りだすので、農具を片づけて料理をする。

 朝ごはんは前日の残り物。

 昼ごはんは野菜。

 晩御飯は料理。

 それがうさみスタイル。


 今日は肉野菜炒めのチンジャオロース風だ。

 大きなフライパンで緑野菜とお肉をを縦長に切って味を付けながら炒めるのだ。

 月一くらいで街に行って買って帰る調味料をふんだんに使う。

 お肉は近所に棲んでる竜の尾肉だ。油が少なめであっさりおいしい。牛豚鶏のなかだと鶏が近い。

 ご飯を炊くのを忘れていたので【時間が早くなる魔法】を炊飯釜にかけて時間短縮。

 汁物としておいものポタージュっぽいスープを温めなおす。一回作ったら数日は同じ汁物を食べる。

 デザートに冷やした果物もある。

 気が向けば手の込んだ料理もするが、普段はこんなものである。



 食事が終わると外は暗いのでおやすみなさい……とはならない。

 食べてすぐ寝ると牛になる。

 なのでちょっとだけ趣味の時間だ。

 うさみはエルフなので暗くても困らないのでご安心だ。

 この趣味も数十年スパンで変わるのだけれど、今は竹細工。

 いろんなデザインのかごを作って街に出るときに売るのだ。

 売れなかったらその辺の人にあげるのだ。

 この趣味のせいで小屋の天井からつるされた棚には乾燥用の切り出した竹や、下準備を経て縦に割かれた竹が山積みだ。



 数時間ほど趣味を楽しみ、いい時間になると、シャワー室へ。

 すでにたっぷりお湯が張られた湯舟にはいる。

 はふぅ。

 異世界へ行って金髪エルフになっても日本人の心は失われていない。

 お風呂気持ちいい。


 お風呂を上がって髪を乾かしたら……そう、決まっている。

 シャツとぱんつを身につけて。


 おやすみなさい。





 以上が異常者うさみの一日でいじょう。

 なんだか普通の農家の人の生活のようである。

 ということはうさみは平凡な農家なのだろうか。そうかも。

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