表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
召喚編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/494

召喚初心者とうさみ 1α ふぁーすといんぱくと 1 

 魔術陣を光が走る。


「やった、成功した……!」


 その傍らでメルエールはつぶやいた。

 三度目の正直。

 すでに二度失敗を繰り返しており、あとがない状況での召喚儀式だったが、陣が起動に成功したようだ。

 あとは最後まで魔力の供給を続ければいい。

 最後の機会であるために失敗する要素は極力減らしてある。

 たとえば自動供給機を貸してもらったうえ、とっておきの魔晶石まで投入してある。であるので、ここから失敗することはさすがにあり得な――え?


「ふぎゃあああ目がああああああ!?」


 魔術陣上の光が突如強烈なものとなり、メルエールの目を潰す。

 メルエールは目の痛みに耐えかねて絶叫し、手で目を覆った。いたいいたいいたい。


 そんな、周りの状況など気にする余裕もなく叫ぶメルエールをよそに、状況は進む。


 魔術陣上の光が、なんか黒いもにょもにょしたものに変化する。


 そこから突き出される何者かの腕。

 人間であれば十歳くらいだろうか。

 白くて細いがぷにぷにの子どもの腕だ。


 その腕は、近くにあったもの、つまりメルエールをむんずとつかむと、黒いもにょもにょへと引き込んだ!


「ああああああああ……え?」


 メルエールの驚きの声を残して、使い魔召喚の祭壇が築かれた部屋には誰もいなくなった。





 □■□■□■□■





「エールフはやさーいーざっそうはげきめつーまちがえてひっこぬいてたいへんだー……ん?」


 農作業中、うさみは妙な魔力を感じ取った。

 そして既視感。

 前にもこんなことがあったような気がする。はてな?


「のーやくつよすぎーやーさいもかれるーたいへんだー」


 草むしりを続けながら考える。なんだっけね。

 そうして、しばらくして思い出す。

 ウサギさん拉致事件だ。


 うさみは千年一周の人生を繰り返している。

 千年というのはまあまあ長い。ドラゴンとか、もっと生きてるやつもいるけれど、大体の生物はそんなに生きない。だからまあまあ。

 そして繰り返す中で、うさみが同じように生きていても、周りが同じ歴史をたどるとは限らないということがわかっている。

 開始時点では確認できる範囲ではどうやら同じっぽいのだけれど、十年百年と時間がたてばたつほど、違うものになってくる。


 例えば最初の時、うさみは結婚というやつをやったのだけど、二度目以降の周回ではその時の相手に会うことはできていない。

 ちみっちゃいうさみに対して発情する残念なロリコンだったのだが、それ以外はまあその結構いい男と言ってもいいかもしれないような感じのやつであった。

 大体転生後三百年くらいの頃のことだったので、その時期に何度か探したこともあるのだけれど、一度も見つからなかった。まあ見つかっても向こうはうさみのことを知らないのだけれど。まあそれはおいといて。


 一方で、大体同じような事件が起きることもある。

 例えばウサギさん拉致事件もそうだ。

 十割の確率ではないが、数回に一度発生するのだ。


 数回に一度。

 うさみ感覚で一死千年から数死……まあ長くて五千年とか間が空くわけだ。

 なのですぐに思い出せなくても仕方がない。

 なんせ、記録を取っても、死んで時間跳躍したらなかったことになるのである。

 頼りは自分の記憶のみ。千年ペース。

 千年生きてればいろいろ経験するので昔のこととか何もかも覚えていられるわけではない。

 仕方ない仕方ない。うさみがボケてきてるわけじゃないんだ。そうなんだ。


 ということで、まあ思い出したうさみであるが、すでに事件は終わっていた。

 危険性が高ければ即座に対応するのだけれど、うさみの身の安全に直接に関わらないささやかな事態だとどうしても反応が遅れるのだ。

 発生するまで忘れているような事件とかだとなおさらである。


 だがしかし。

 此度のうさみはもう一つのことを思い出す。

 事件はもう一度起きるのだ。

 今回ちょっと暇を持て余していたうさみは、どうしようかなと考えた。

 正直黙殺してもいい案件だ。

 ウサギさんは多すぎるくらいいるため、ちょっとくらい連れていかれてもさして困らない。

 連れていかれなくても、魔物とかと戦って死んだり食べられたりとかよくあるし。自己責任の自由。

 だけども、うちの縄張りに手を出す以上、ケジメつけてやらんといけんじゃろ、と思わなくもない。

 うーん。


 とりあえず捕まえて話を聞いてみようか。


 というわけで、大体気まぐれであったが、今までは妨害したりスルーしたりしていたところを、ちょっとだけ手間をかけてみることにしたのである。



 そして時が来て、発動直前のウサギさん拉致のための魔法を乗っ取って改竄して先方直通の空間直結門に変換、犯人を手元に引きずり込んだのだった。





 □■□■□■□■





「え?」


 現れたのは中学生くらいの女子。

 赤い髪でやせ気味だけれど身長は高め。活発そうな少女であった。

 なぜだか知らないが目を掌で覆っている。


 そんな少女を、うさみは近くにあった一メートルくらいの岩の上にぴょいんと跳び乗った。

 そしてやさしく声をかけた。


「おうおうねーちゃんよう、あんた誰に断ってうちのかわいいウサギさんに手を出そうってんだい?あーん?」


 岩の上に仁王立ちで腕を組み、魔法で一時的に生み出したサングラス的なもの目にかけて、拉致未遂犯にやさしく(・・・・)声をかけたのだ。


 しかし拉致未遂犯は目を覆ったままうずくまる。


「え、なにどうしたの、おなかいたい? 大丈夫?」


 慌てて岩から飛び降りて駆け寄るうさみ。


「目が……」

「メガ?」

「いきなりぴかってなって眩しくて目がすごい痛いの……ちょっと待って……」

「あ、うん、いいよ」




 これが、うさみとメルエールの、多分最初の出会いであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ