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召喚初心者とうさみ 0 ふぁーすとすとらいく

召喚初心者とうさみ 1 よりだいぶ前のお話です

別の一生、他生の縁?

 うさみは異世界転生者……転移者?

 なんかそのようなものである。

 さらにタイムリーパー、時間跳躍者でもある。


 ゲームをしていて、やめようとして操作をしたところ、気がついたらプレイしていたゲームにそっくりな世界に、プレイしていたゲームの自キャラそっくりな姿で立っていた。

 そしてそのキャラはエルフであり、ちっちゃくてかわいい女の子であり、千年生きるという設定だった。

 実際に千年生きてうさみは死んだ。

 死んだら千年前、つまりこのゲームそっくり世界に来た瞬間に記憶を残して戻されていた。


 “うさみ”はゲームキャラとしての名前であり、姿も含めてもとの、地球に住んでいたころのとは別の存在だ。生まれ変わったようなものなので転生?

 ゲーム世界から異世界にそのままの姿で移動したので転移?

 でもレベルをはじめ能力は初期値だったのでやはり生まれ変わったような感じで転生かもしれない。よくわからぬ。


 なのでまあ異世界転生転移時間跳躍者うさみなのである。


 なぜこのような濃い設定になったのかは、今のうさみはわかっていない。

 『異世界転生初心者とうさみ3』で大体神様のせいということが発覚しているが、今のうさみは何回も生きたり死んだりしている最中であり、まだそのことを知らなかった。


 さて、そんなうさみだが、結構な時間畑を耕して過ごしていた。

 なぜかというと、いい感じに時間がかかるし、うまいこといけばおいしいもの食べられるからである。

 大体あれだ、千年は長いのだ。

 早い段階で農作物の品種改良に手を付けないとその長い時間あんまりおいしくない食事になってしまう。

 千年たてば努力は無に帰するが、それでも食事は毎日の楽しみ。ならばより良くあるべきだ。

 そのことに気づいたうさみは農業に力を入れはじめた。

 もともと地球時代農家の娘をやっていたのでまあ最低限の知識はあった。最低限。ないよりまし程度。戦闘力五か、ゴミめ。

 しかし通算何千年とやっていればまあまあ慣れてくるし、まめに畑の様子を見ないと落ち着かなくなるし、天気が悪くなると水路の様子を見に行きたくなる。

 そんな感じ。


 そんなある日のこと。


 うさみは妙な魔力を感じ取った。

 それはうさみが有り余る農作物を処分するのに使っているウサギさんたちの巣のあたりからだった。


 農業をしていると時間が許す限り働いてしまい、また品種改良をする過程でいらない農作物がたくさんできる。

 しかしただ捨てるのはもったいない。もったいないお化けが出てしまう。

 かといって人里に売りに行くと税とかなんとかいろいろめんどくさい。

 なのでウサギさんに家の近所を開放してエサとして与えることで処分している。

 ウサギさんはかわいいし一石二鳥である。

 まあウサギさん以外もいるのだけれど。


 ともあれ、うさみはちょっと様子を見に行ってみた。


「ふんふーんおかしなーまりょーくー」


 一人暮らしになると全くしゃべらないタイプと独り言が多くなるタイプがいるが、うさみは後者で、しかも歌うタイプだった。

 るんるんでスキップしながら歌うその姿は元気のいい小学生……もとい、森の妖精エルフの名にふさわしい愛らしさである。

 これで百歳以上、それどころかなんども死んで時間跳躍してを繰り返してるのでそれ以上の桁の年月を生きているとは思えない。

 そんなうさみの数少ない趣味は毎日髪形を変えることだがそのレパートリーはあんまり多くなかったりする。年齢より少ない。あと必ず大きなリボンのついたヘアバンドをつけるので場合によってはわりと変。

 今日はゲーム時代の友人が好んでいたツインテールである。


 話がそれた。

 ツインテールをぶるんぶるん跳ねさせながら、うさみはウサギさんの様子を見に行く。


 そんなうさみに気づいたウサギさん。

 一斉に集まってきた。

 そう、うさみが来るということはご飯がもらえるということだ、そう認識しているのである。

 その数は視界を埋めるほど……というのは大げさだが。

 森のはずれであるので木々が視界の結構な範囲を占有しているのだ。


「あ、ごめんねー、ご飯じゃないんだ。さっきの様子見に来ただけ」


 寄ってきた理由を察したうさみが言うと、ウサギさんたちはいっせいに後ろ足で地面をたたいた。


 だん。


 数が数である。その音圧だけで地面が揺れたかと錯覚しかねない大きな音がする。というか揺れたかもしれない。

 翻訳すると、ちっ飯じゃねーのかよしょうがねーなけーるべけーるべ、といったところだろうか。

 現に集まったウサギさんの大半が三々五々散っていった。


 そんな様子を尻目にうさみは目的の場所へたどり着く。


 あんまり急がなかったせいか、すでに問題の魔力はその役目を終えていた。

 しかし残滓は残っている。


「ふむ」


 うさみは腕を組んで考えて。


「誘拐? でも手あたり次第のランダムか」


 どうやら、ウサギさんが魔法で拉致されたらしいと読み取って、うさみはあたりを見回した。

 だいぶ散ったがそれでもたくさんのウサギさんがのんびりと遊んでいた。


「ま、いっか、そんなこともあるよね」


 面倒だったので放っておくことにした。





「おや?」


 それからしばらくして、また妙な魔力を感じた。

 ウサギさんが拉致された例の魔力である。


「よくないなー。えい」


 うさみは農作業をしながら、魔法の発動をたたきつぶした阻止した。

 効果を発揮する前に魔力を奪ってしまえばそれでおわり。

 こうしてウサギさん拉致第二の事件は未遂に終わり、うさみは千年生きて死んだ。





 ■□■□■□■□





 一方、とある魔術王国在住のとある男爵令嬢は三度目の使い魔召喚に失敗して退学になった。

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