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剣初心者うさみ 120

 君、魔法使いの才能あるかもねと、うさみが言ったが、バルディは剣士であり流派の一員として生きることを決めていたのでまあほどほどに、と流した。


「ともあれ、魔法はそうやってたくさんの決まり事、動作であったり言葉であったり書きつけた文字や図形だったり、そういうものを作ることで、利用しやすくなっていったのね。そういった工夫から生まれた魔法も、名前を付けられてスキルになって、さらに簡単に使えるようになっていく。そして当然普及するのは簡単な方だよね」

「まあ、そうなるな」

「魔法使いが呪文を唱えたり変な踊りみたいな動きをしたりするのはそういうことなんだ。逆に、そういうのを簡略化する手法もあるし、同じ効果でも負担、つまり暴発の可能性や必要な魔力を増やした別の手法の魔法もあったりする。魔法は歴史の中で一度蓄積が失われているし、もともと開発がバラバラだったこともあるし、そもそも魔法自体が勝手なものだからスキルとして存在する魔法も無数にあるわけだね」


 途方もない話を聞かされているようにも思うし、勉強になるとも思う。

 とはいえ、バルディは斬りこむことにした。


「では、概念斬りは一種の魔法なのでは?」

「うん。そういう側面はかなり大きいと言っていいと思う」


 うさみが迂遠に認める。


「最初行き詰ってた魔法斬りからしてそうだよね。魔法を斬るための剣を使えば誰でもじゃないにせよできるけど、普通は剣で魔法は斬れないもの。魔法を斬るとすればそれは魔法に踏み込んでる。剣による攻撃に限定されていても、それは魔法使いが唱える呪文と同種のものともみなせる」

「魔法剣、いや、魔剣か」

「どちらも呼ぶ人いるよね。そして、一度魔法の領域に踏み込んだら、後は想像力」

「ああ、そう話が戻ってくるのか」


 話が一周してきた。


「剣に限らず、いろんな技術は突き詰めていけば魔法に通じうるんじゃないかな。神話によると人類は魔法を使えるように作られているらしいから、信じるならそうなってしかるべきでしょ。魔法の剣があるのだから、剣で魔法を使えてもおかしくない。ただまあ、剣の極みを魔法と一緒にすると両方に怒る人がいるからあんまり言いふらせない話なのと、わたしが知らないだけで魔法関係なく剣で何でも斬れるようになるようにこの世界ができている可能性もないわけじゃないけど」

「それは、見つかってないものを証明はできないよ」


 魔法剣士を剣士としては邪道と考える者もいる。だがそうでない者もいる。それだけだろう。


「話を戻すけど、魔法による防御を斬るのと、距離を斬るのとじゃ発想に必要な段階がまるで違うじゃない? そして発想できたとしても、実現させるだけの想像力、想像強度とでもいうのかな? できると信じる力がないと足りないよね。興味本位で聞くんだけど、どうやって距離を斬ろうと思い至ったの?」

「射程が剣の弱点だと何度も教えられてきたからだな……ですね」

「ですね?」

「射程の大きさが有利につながることはいろいろな相手と戦えば実感できました。一方で、剣の極みについてジョウと話したことがありまして」

「なんで話し方を変えるの」


 何でも斬れる剣。斬りたいものだけを斬る剣。

 何でも斬れるなら、何でも斬れるだろう。

 斬りたいものだけを斬れるなら、邪魔なものは無視できる。


「魔法斬りが上手くいかなくて迷走していた時に、別に魔法を斬らなくてもいいのではないかと思いつきまして。まあその時はうまくいかなかったのですが」


 あまりにうまくいかないので、成功した時のことを考えた。

 バルディの最初の成功といえるのはやはり飛び級だろうか。

 あの時は、見本を見て剣を振ったのだ。

 見本とはうさみである。

 ……そういえば、道場に来て最初に見たのも、うさみが剣を振る姿だった。

 バルディの初心である。


「そうして思い出したんです。魔法の力も借りて」


 バルディがジョウから教わった思い出す魔法は日時と内容を指定すれば目の前で起きているかのように思い出せるものだった。


「うさみの剣を今の視点で見るとかつてとは全く違うものが見えまして。私の技は自分で至ったとは言えないものなのです。つまり、今の私があるのは、うさみのおかげなのです。ありがとうございました」


 バルディが頭を下げると、うさみは目を白黒させて大いにうろたえた。

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