剣初心者うさみ 113
「裏を取るように動いて隙を窺っているだけで厄介」
「わかる」
二対一で動いてみれば、ミーナの有能さがわかる。
正面からの攻撃が通じにくい場合に、味方を主、自身を従として支援に徹することができるのだ。
臨機応変に主と従を切り替えてきたり同時に主となれる方が、もちろん危険で厄介だろうけれども、役割に徹することができるのはそれはそれで強みである。
もともとおジョウさんの方がバルディ実力が高いので注意を分散させられるだけでも苦しいのは当然である。
だがそれだけではなく、バルディとの慣れによる連携を加味すればおジョウさんに対しても十分注意をそらせる動きができるのである。
つまり昼の修練において、初めて一矢報いることができたということであり。
これによってよりおジョウさんとの実力差に見当がついた。
これまではおジョウさんの側に余裕があったせいで、その限界を見極められていなかったのだ。
三日目にして目指す先が見えたことは大きな進捗である。
とはいえ、同じ期間でおジョウさんも成長するのだろうが。
「お二人に合わせているだけですの。ついていけなくなるまではついていくですの」
「ありがとう、ミーナ」
「どういたしまして。ですの」
「おねえさん二人だけで空気作らないで欲しいなあって」
さて、少々ゆるい時間を挟んで、バルディの修練は再開した。
バルディ、おジョウさん、ミーナ、ときどきハン師範。
ハン師範がいる時はミーナは外れる。
夢の修練場もミーナは参加できない。
しかし、ミーナとの実力差は広がらなかった。
これは驚くべきことである。
バルディはこの上ない好条件で修練しているのだ。
ミーナの方が才能がある、というのは簡単だ。
だが、ミーナも時間の余裕を使い自前での修練を重ね、おジョウさんとバルディを観察し、と力を尽くしているのだ。
力量が上のものとの修練は身になるもの。特に、いまバルディは全力を振り絞っているところであり、見て学ぶにはまさに適当な素材である。バルディの成長に引っ張られるように力をつけていったのだ。
その方向性は対バルディ、対おジョウさんに特化するものであったが、毎晩手管が広がるバルディに、それに対処し二晩ごとに動きが洗練されるおジョウさん、この二人への特化は様々な状況で一撃を通すことを身につけることに他ならなかった。
ただ、バルディの方にも原因があった。