剣初心者うさみ 108
「スキルを縦に繋いですべての行動をスキルで補うことを考える人たちが、スキルを横に並べて同時に使うことを考えないわけがないわよね」
それぞれ直列、並列と呼ぶらしい。
スキルを同時に使うということは、まあできる。
例えば右手のみを使うのスキルと左手の身を使うスキルなら同時に使えるだろう。
また、明らかに特定あるいは一部のスキルを強化するためのスキルもある。
しばらくの間集中力を高めるとか、力を高めるとか言った効果は、その間に別の何かをする前提のもので、それが別のスキルであってもおかしくはない。というよりそうであって当然だ。
スキルが過去の人物の行動を再現するものだ。行動を補助する効果を受けながら使えないのでは再現とは言えないだろう。
しかし、だからといって、右手と左手で別のことをしたり、原則同時にできて当然の行動と、一本の剣で同じ斬るという行動でありなおかつ性質の違うを同時に行うのとでは話が違うだろう。
それにしても。
「他所の流派の話も詳しいですね」
「こういう家に生まれると、外向きの付き合いもあってね。同じような境遇の友達もいるのね。そのうち紹介するわ」
「女性ですか?」
「うふふ、そうよ?」
男性であったならおジョウさんの結婚相手の候補であったかもしれない。
他流派の情報を、どの程度かわからないが教えられている友人というのは相当に懇意だろう。
しかし現段階でバルディが耳にしていない以上、男性ではないはず、と考え口にしたところ、なぜかおじジョウさんが笑顔になった。
「お互いの方針が大きく違うと、逆に仲良くできるところもあるの。向こうは未確認のスキルの情報を常に求めているしね。もちろん普通に仲が悪いところも多いけれどね」
「渉外も覚えなければいけませんかね?」
「そうなるかもね。まあ、あたしの友人は結婚したらそのうち紹介するとして」
スキルの話に戻る。
斬れないものを斬るというのは剣士としての目標である。
装甲を斬るための技。兜割りや鎧貫きなどがある。通常、甲冑などは刃を通さないためにある剣への対策装備であるので、剣士にとっては邪魔でしかない。自分が使う分には別だが。
魔法を斬る。
魔法は
魔法使いでなければ魔法に干渉することは難しい。しかし、剣で魔法を斬り払う技は存在しており、剣術大会でも見ることができる。
達人ならば魔法を斬ることができるのだ。
飛来する魔法を斬ることができれば。または魔法による防御を斬り開くことができれば。準備万端な魔法使いに対しても優位を取ることができるだろう。
しかし、それらはそれぞれ異なる技術であり、一度の斬撃で両立させるというのは。
「できるわ。根拠は、そういうスキルがあることよ」
それはまた確かな証拠であった