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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
剣士編

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剣初心者うさみ 106

 剣が通用しない相手は多い。

 遠くにいる相手。

 飛行能力と遠距離攻撃手段を併せ持つ相手は最悪だ。

 刃が通じない相手。

 強固な甲殻であったり、特殊な魔法能力であったり、肉体を持たない霊体であったりすると届いても切ることはできない。


 竜などはその両者を併せ持つ。空を飛び、炎や魔法を操り、強靭な鱗は刃を弾く。

 しかし、そんな竜もまた、剣を持つ勇者によって討伐されることもある。


 竜殺しは偉業であるが、成し遂げた者も確かにいるのだ。

 それは剣を届かせる手段があるということ。



「達人はいかなるものも斬ることができる、と、まだその域に達していないあたしが言うのは説得力がないかもしれないけれど。魔甲団子虫のような魔法による強固な守りを斬る方法はあるわ。その一つは気合いよ」

「気合いでなんとかなりますか?」

「なんとかするのよ」


 気合いでなんとかなるなら苦労はしないように思えるが、何とかならないなら気合いが足りないのだという。


「達人の技は魔法に比する。斬るという強い意志が身を守るという魔力を越えれば、切れないものはなにもないの」


 鎧だから斬れない。甲殻だから斬れない。霊体だから斬れない。魔法の防御だから斬れない。

 いや斬れるし。むしろ斬ったし。とばかりに、現実をねじ伏せるのだという。


 それはいかにも魔法である。剣の達人は魔法使いだったのか。


「どの技術も、極めれば魔法の域に届くのですって。魔法使いが使う魔法との違いはその方向性が限定されることだけれど、特化していることもあって実用では見劣りしないとか」


 バルディが少しばかり疑惑を抱いていたことを見抜いたのか、おジョウさんが言葉を重ねる。

 物語の中で、何でもできるという魔法使いと肩を並べる勇者がいるのはそういうことだったのか、と理屈は理解できるがいまいち実感が追い付かない。

 自分の剣が斬れないものを斬るという矛盾を想像できていないのか。


 とはいえ。

 師にできると言われたならやるのが弟子としての務めであろう。

 おジョウさんは師範ではないものの、師範に指導を任せられた存在である。

 それに、諸々の事情も、おジョウさんの性根も、嘘を告げるわけがないと信じられるものだ。


「ん、やる気になったね。それじゃあ、終着点のことはひとまず置いておいて、そのはじめとして、甲を割るスキルと、魔力を斬るスキルを伸ばして、組み合わせられるようになろう」

「スキルに、組み合わせですか」

「そう。これまでスキルに頼らず身につけることを教教えてきたけれど、スキルを使うことも覚えましょう。あるものは利用するべきよね」


 未だ見えない極地の話から、また別の新しい概念を教えられ、バルディは目を白黒させるのだった。


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