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剣初心者うさみ 102

 能力を下げる魔法。

 これがおジョウさんの言っていた一つの魔法である、わけではない。


 おジョウさんから最初に伝授された魔法は、【思い出す魔法】である。


「頼り過ぎたら馬鹿になるから、大事な時だけ使うのよ」

「馬鹿になったんです?」

「どうかな。そうかも」


 反撃を期待したのに肩透かしを食らった時の気持ちに名前を付けたいがしっくりくるものが思いつかない。


 さて、おジョウさんが後ろから抱き着くようにして魔法の使い方を教えてくれた。

 この体勢は可能な限り体を密着させないと難しいからだという。おジョウさんの師であれば手をつなぐだけで可能らしいが、おジョウさんは身体の向きを合わせ、体内を流れるものを実感できないとできないのだそうだ。

 おジョウさんが、バルディの体を通して魔法を使うことで、バルディが思い出す魔法というスキルを飛び級のカタチで習得できるらしい。

 将来的にはこの魔法の伝授法も覚えてもらうということだったが、ひとまずは思い出す魔法だけ――ということだったのだが。


 意外とバルディと魔法の相性がよく、他にもいくつか魔法を教わることになったのであった。密着して。


 とはいえ魔法使いを目指すわけではなく、おジョウさんも決定的な戦力になる魔法を学んでいるわけではなかったため、水を生み出す魔法であるとか、方角を知る魔法であるとか、あると便利なものが中心だ。


 そんななか、異色ともいえさらにバルディと相性が良かったのが。

 能力を下げる魔法。

 正確には【自身の能力を下げる魔法】であった。


 効果対象を自身に限定し、また自身の体に効果がある魔法と相性が良かったらしい。

 治癒促進スキルを使うことに慣れていたからか、五年間に加えこの修練場においても自身の体の使い方を掘り下げてきたからか、あるいはまったく違う理由か。

 もっとも、理由など意味がないのかもしれない。なんと言っても魔法なのだ。


 さて、ならば能力を下げるより上げる魔法を覚えたいところだったが、それはスキルで鍛えるべきだと。加えて言えば下げるよりも上げるほうが難しい。下げるのは手加減したりおもりを身につけるようなもので、上げるのは限界を超えるようなものと言われればなるほど。

 むしろ下げることで不利な状況を作り出したほうが成長につながる。

 なにより、能力を現実世界と同等まで下げることで、スキルの再取得の際の感覚の乖離を押さえることができる。


 といった理屈で自身に魔法を使用しての戦いと使用しない戦いを交互に繰り返し、魔法に慣れつつ、彼我の能力が変わる場合の視点を

 正直混乱しそうではあるが、切り替えに慣れれば、将来、スキルも鍛え上げた後に能力を上げる魔法を使う時にも役に立つだろう、ということなのでやるしかあるまい。

 あるいは、怪我や不調で十全に能力を発揮できない時の予行となるかもしれない。

 大抵のものには良い面、悪い面があるのだから、良い面を利用するのは間違っていないだろう。




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