剣初心者うさみ 101
94と100を同じ内容を投稿していました。
確認したところ、94が間違ったものを投稿していたようなので、94を修正しました。
全身が甲殻に覆われている、人間と同程度の体高の四足獣の魔物。体重は十倍はあるだろうか。
牙はないが頭部に太くて長い立派な角が生えている。先端がとがっているので突き刺さると体を貫通して死ぬだろうか。いや、体当たりされただけでも十分致命的か。
鋭い牙は見られない。噛みつきよりは角に注意すべきだろう。
足は太く短い。段差に弱いかもしれないが、今回は利用できそうな段差は近くにないようだ。
見渡す限り背の低い草しか生えていない平原は、基本的に人間にとって不利とみてよい。
大きさは剣と相性がいい範囲であるが、甲殻が刃物とは相性が悪いので総合的には圧倒的不利。
直進の速度はバルディより速いが見た目通り小回りは効きにくいようだ。
とはいえ、広い場所では走り抜けて距離を取って再突撃を繰り返されるだけで小回りの振りを生かすのは難しくなる。
単独では何とか突撃を回避しつつ、すれ違いざまに何らかの対処を行うほかにない。他のことをするには時間が足りない。
もっとも、頑強な甲殻が剣を通さないためにできることもまた限られる。
二人いれば狙われた側が回避に専念しつつ、もう一方が比較的安全に動くことができるのだが、やはり攻め手に欠くことに変わりはない。
といった評価を下した仮称一角鎧獣に対し、バルディは背を向けて逃げる構えを見せ追いつかれつつも一時的に並走状態に持ち込みその角をつかんで頭に飛び乗ると太ももで相手の首を挟む形で体勢を維持し両手に刺突用の短剣を構えたかと思うと相手の目に突き刺したかと思うと一角鎧獣が恐ろしい音量の悲鳴を上げ頭を振りまわした勢いでバルディは宙へとはねとばされた。
「バルくん!」
見守っていたおジョウさんが悲鳴を上げる。バルディは地面を転がった勢いを利用して立ち上がり、しかしすぐにその場にうずくまった。
慌てて駆け寄るおジョウさん。
しかしバルディは痛みをこらえつつそれを制し。
「離れましょう。しばらく暴れるはず……」
と改めて立ち上がったので、おジョウさんが肩を貸して一角鎧獣から距離を取った。
そして、目を潰されて剣を差し込まれたまま暴れまわる一角鎧獣が絶命するまで様子を見ながら反省会。
「着地の時に鎧に仕込んだ予備の剣が腹を切ってしまって死にそう」
「それは戦い以前の話ね」
バルディの腹には短剣が刺さっていた。
最近のバルディは、両手でも片手でも扱える、刀身と柄がやや長めの剣を一振り背負い、歩兵用の一般的な大きさの剣を腰に差している。
さらに、多数の短剣を体の各所に仕込んでいる。
その上で様々な剣を一抱え持ち込んで戦場に移動した直後にその場に捨ててから戦闘開始をしている。
無作為選択だとどんな相手が出るかわからないのと、剣が割と容易に曲がったり折れたり切れなくなったりするので予備である。
いかなる状況でも臨機応変に対応できる装備を用意できればいいのだが、剣しかないのと持てる量、そして身に着けて動ける重量と体積にも制限がある。
人体の限界と、剣が対魔物向けではないということを存分に思い知っている。
実際、いまも剣を二本失っている。数を相手にすることになると先ほどの戦い方では十全にうまくいっても剣の数が足りなくなるだろう。
根本的にやり方を更新しなければ前へ進めない。
「これでも比較的楽な相手なんだよな」
「能力を下げる魔法を使ってこれなら、悪くないとは思うけれど」




