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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
召喚編

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使い魔?うさみのご主人様 40

 うさみがぼそりとつぶやいた。


「まあでも、そろそろ潮時かなあ」

「しおどき?」


 ほとんどの時間ニコニコヘラヘラしていたうさみが、真顔になって言った言葉にメルエールは嫌な予感がした。


「メルちゃん様そろそろ使い魔召喚しよ。わたし事故かなんかで死んだことにして帰るから」

「え、あ、いやちょっと待ってよ、この状況に放り込んでおいて一抜けする気?」


 厄介なお姫様に目を付けられたのは言うまでもなくうさみの行動がきっかけだ。


「お姫様はわたしがいなくなれば興味なくすんじゃないかな」


 そして、求められているのもうさみの知識である。

 ただ、あの気に入られ方はそれだけのようには思えなかったのだが。他に理由も思いつかない。


「それに、時間をかければかけるほど、ボロが出やすくなるよ。連絡に使い魔を通すみたいなことを言っていたでしょ」

「う、それは危惧してることだけれど」


 普通の魔術士は使い魔と感覚共有できる。

 ある程度範囲が限られるものの、使い魔が見ているもの、聞いていることなどを主も感じ取れるのだ。

 学院敷地内くらいは余裕で範囲内である。


 これを利用すればお互いに使い魔を送り合えば遠隔で会話ができる。

 さらに、うさみの場合は自身も言葉をしゃべることができるので、相手の使い魔をメルエールのもとに送る必要がない。


 もちろんうさみが本当に使い魔であればである。


 実際にはうさみは使い魔ではないのだ。

 メルエールの退学を防ぐためにごまかしているだけである。

 この弱点は想定済みであり、可能な限り行動を共にして現場では臨機応変にごまかし、別行動した際には綿密に事後報告をするということになっていた。


 しかし、そのようにはならなかった。

 うさみがそれを守らなかったからである。

 夜中に抜け出して行動していた。

 いままでは大事に至らなかったことと、特訓に必要な例のマズい薬と緑汁を作るため必要だったということでなあなあにしてきた。


 しかし今回は他者、それも非常に厄介な相手に関わり、ギリギリまで報告しなかった。

 その結果、見えていた石に躓いた形で厄介ごとに飛び込むことになったのだ。


 これは重大な問題だ。

 問題なのだが。


 すでにメルエールはうさみに強く出られなくなっていた。

 なぜなら、頼りにしてしまっていたからである。

 口ではいろいろ言うが、根っこの部分でうさみを当てにしてしまっていたのだ。


 うさみはまあその、わりとひどい。

 あとから理屈を聞いて、その前提に立てば必要なことだったと理解はできるが、追い込んで不安がらせて命の危険にさらしてということを平気でメルエールにやってきた。

 しかし結果としてメルエールはそれによって成長した。


 成績は下の下だったのが中の下くらいまで届きそうで、勉強会を続ければさらに上を目指せるかもしれない。

 魔術の腕はの方も手ごたえがあり、丁寧に練習を続ければ落第圏内に落ちる心配はなさそうだと考えられるほどになった。

 それこそ今なら使い魔召喚儀式を問題なく成功させられるとも思う。

 長らく悩まされていたワンワソオ黒森子爵嫡子も、うさみがきっかけで寄ってこなくなった。

 友人もできた。リリマリィ西華男爵令嬢も一時期より距離は離れたが、普通に話すし勉強会も一緒に参加してくれる。

 いくつか懸念がないわけではないが、おおむねメルエールのためになっていた。


 流石にメルエールでも気が付く。

 うさみは、意図はともあれ、メルエールのためにこれまで動いていたのだと。

 そしてそれは経過はともあれ、上手くいっていたのだ。

 これを理解してから、うさみを頼る気持ちが生まれてしまっていた。


 なので今回のことも何か考えがあってのことではないか、という思いが捨てきれず。

 うさみがいなくなると言われても曖昧なことしか言えなかった。

 しかし。


「ほら、悩んでる暇はないよ。今日明日のことじゃないけれど、時間は有限だよ。わたしがいなくなるのは予定してたことでしょ」

「でも……いや、そうね」


 もともと、どうしようもない状況を一人でがんばっていたのだ。結果は出せなかったけれど。

 そこからここまで。

 死亡確定の状況から生き返ったと言ってもいい。

 抱えていた問題のうち、切羽詰まっていたものを含めて半分以上は取り除かれたのだ。

 王族に目を付けられたくらい……くらい……。

 う、うさみがいなくなっても何とかなる。多分。


 メルエールは覚悟を決めた。

 まあちょっとはためらいがあるけれど、今までもだいたいそうだった。

 いざ追い詰められたら動くしかないのだ。

 そして動くしかない状況で、他のことは置いておいて動くことができる。

 恐怖とかためらいとかがあったとしても、とりあえず行動できる。

 それがメルエールの、自覚していない長所であった。


「それじゃあ、わたしが消えるための段取りと、今のうちにやっておきたいことを考えようか」


 ギリギリまで自分の考えを言わず主導権を手放さないことが多いうさみが、珍しくなメルエールに考えを聞いてくる。


「そうね、じゃあまずは」

「まずは?」


 やるべきことはたくさんあるだろうけれど。


 メルエールは部屋をぐるりと見まわした。


 まず必要なものがある。


「新しい抱き枕を手配しておきましょう」

「それかあ」


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