剣初心者うさみ 100
7/14 2:00 94と100を同じ内容を投稿していました。
確認したところ、94が間違ったものを投稿していたようなので、94を修正しました。
「剣に関わるスキルにも、魔力を使うものがあるから、魔法と無縁というわけではないのよ」
魔法を覚えるとなると、ただでさえ処理能力を超えつつあるやるべきことが、さらに増えてしまうことになる。
剣士として力をつけようというのに、魔法を使うのは寄り道なのではないか。
そもそも、バルディに魔法が使えるのか、その才があるのか。
五年間基礎を積み上げてきた剣と違い、今から魔法に手を出すのはいかがなものか。
教えようとしているおジョウさんが魔法を扱えるのか。
などといった疑問を抱いたバルディをおジョウさんの一言はバッサリと切り捨てた。
剣が魔法に片足を突っ込んでいるという主張である。
剣が魔法とかかわっているだなんて、そんなことが――。
「治癒促進あたりはわかりやすいと思うのだけど」
――あるかもしれない。
治癒促進は怪我や疲労の回復を早める効果があるスキルであり、代償として早めた分だけお腹が減る。
はじめはうさみの魔法と合わせてようやく骨折を数日で治すという程度――この時点でだいぶインチキだがこれは魔法の効果が大きい――だったが、日ごろの成果により、今では筋肉痛をその日のうちに治すほどの効果がある。
……修練中によくある怪我を治す速度は上がっているので成長しているのは間違いない。
改めて考えると、この回復力は魔法的かもしれない。
そういうものだと慣れてきていたが――いや、魔法とはそもそもなんだ?
炎を生み出して剣に纏わせるのは魔法だろう。
魔法を使わずに見かけ上同じようなことはできる。油を纏わせ火をつけたり。同じ効果を発揮するにはもっと工夫が必要だろう。剣を燃やしても劣化しないようにするなどだ。
魔法とそうではないものとの境界をバルディは知らなかった。
「あたしの魔法の師が言うには、極論すればすべては魔法であり、正しく理解していれば魔法は何でもできるのですって。ただ、正しく理解というのが人類にはおそらく不可能で、その理解と、想像力の限界によって魔法が大きく制限されていると」
「すべてが、というと」
「この世界そのものが神様が使った魔法によって生まれたもの」
「神殿所属の人に聞かれたら、えらいことになりますねそんなこと」
「だから秘密よ?」
おジョウさんが口許に人差し指を当てて目配せをすると、バルディはこの人ほんとズルいよなあと思ってしまう。
「重要なのはそんな大げさなことじゃなくてね。人間はみんな魔法を使う素養があるから、スキルを利用すれば覚えるだけなら簡単なの」
「夢の修練場を出たらスキルはなくなりますよね?」
「その点を解決するための魔法を一つ、修得すれば一歩目としては十分よ。一つだけは自力でできるようにならないといけないけれど」
一つだけであればなんとかなるかもしれない。
魔法使いになりたいわけではないが、剣を鍛える役に立つならと、少し前向きになるのだった。