剣初心者うさみ 95
「レベルを上げた時の能力の振り方を身につけるのよ」
夢の修練場に、おジョウさんが。
同じ部屋で寝ることで一緒に修練場へ入れるらしく、二日に一度、そうすることにしたのだった。なお、同衾もいかがわしいこともしていない。少なくとも初日の今日はそんな余裕はなかったし、次は結婚してからということになっている。
共に修練することでおジョウさんから教えを受けることと、その動きを覚えるのが目的の一つである。
おジョウさんは指導の経験を、バルディはそれにより力をつけることができる。
どちらも、昼間の修練でもできることではあるが、夢の中の方が時間の余裕がある。
そして現実でしか体やスキルを実際に鍛えることはできないのでそちらに時間を割きたい。
毎日ではないのはバルディがおジョウさんへの対策を編み出すためと、バルディにはすでに教えを受けるだけでなく自ら考え発展する能力も期待されているためだ。
シ家に婿入りするならば、将来師範代以上となって流派の頂点の先を開拓できるようになってもらわなければならないと、そういうこと。
成人したての若造に求められることが多い。
だが必要なことである。
道を選んだ時、すでに受け入れていたことだ。
さて、夢の修練場に入った時、攻略状況は引き継がれるが、自身の能力は寝た時の現実の体に準拠する。
つまり、前回死に続けて鍛えたスキルやレベルは引き継がれていない。
昼間鍛えた分は反映されている。
現実でレベルを上げれば反映される。
そういうしくみなのだという。
レベルを上げると、生命力と魔力があがり、そして能力が一つあがる。
生命力が上がると死ににくくなる。
魔力が上がるとできることが増える。
そして能力。
「もっと力が強くなりたい、速く動きたい、頭がよくなりたい。そのように思っていれば、上げたいものを選べるわ。意識していなかったら、無意識に望むものが選ばれるそうよ」
「能力は、スキルでも上がるんですよね?」
「上昇とか、鍛錬とかついているスキルね。これはその能力を鍛えるための鍛錬をすることで伸ばせるけれど、加算部分と乗算部分があるの」
「そうすると、元の能力の影響が大きくなりますか……そこまで詳しいことをよく調べましたね」
「魔法の眼鏡と、この修練場があるからね」
鍛えれば強くなる、ということは知られているが、さらに踏み込んだ検証は他では聞いたことがなかった。
皆秘密にしているのか、一距両疾流がすごいのか。
どうも後者のようだ。
「魔法の眼鏡。師範代が時々つけていた眼鏡は、やはりそうだったのですね」
「あれ、流通しているものよりいいやつなのよ」
魔法の眼鏡は相手のスキルを見ることができる魔法の品だ。
危険物だが有用なので欲しがる者は多い。
危険物なので流通に制限がある。
バルディが知っていたのは実家の関係だ。魔導具も扱っているため、知識だけはあった。
だが、流通しているものよりいいもの、というのは。
じつは見当はついている。ただ、確信はない。
夢の修練場に高品質な魔法の眼鏡。
そんなものを用意できるのは何者か。