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剣初心者うさみ 91

「魔物と戦ってみてどうだった」

「身体能力が人間より高いですね。そして身体構造も。あれと比べると、人間の個人差や種族差は誤差の範疇だと誤解しそうになりますね。さらに魔法らしき能力を持ち合わせている。人間と剣で打ち合うのとはまるで要領が違いました。」


 暗黙の了解として、夢の修練場のことは口にしない、ということはバルディも理解している。

 なので、荘園内の山中にある修練場という人がまず近づかない場所であっても、誰かに聞かれても大丈夫な言葉を選んで遠回しに会話をする。


 さて、夢の中でバルディは多種の魔物と戦った。

 その印象は言葉にした通り。


 これはつまり多様な形態や能力、特徴があるために、すべてに対して対策をすることは難しいということだ。

 攻めやすい共通の弱点などがあればいいが、それであっても攻める方法は変わってくるだろう。

 人間よりはるかに大きく見た目以上の速さで機敏に動く魔物と、小動物並でも首を狩りに来る魔物。圧倒的硬さを持つ魔物に、剣を溶かす半液状の体を持つ魔物。

 どれもこれも、人間と相対するのとは方向性が違う恐ろしさがある。


 対人間であれば経験を積みやすい。駆け引きもあるし初見殺しの罠もあるかもしれないが、それも込みで死なずに経験を積める。


 だが、魔物は加減をしてこない。生体そのものがそれぞれの種ごと、場合によっては個体が初見殺しを仕掛けてくる。


「情報なしで、対応した修練なしで挑むのは恐ろしいです。力や速さが上であるだけならまだマシですが、何を持っているのかわからないのが嫌ですね。そういうのを無視できるくらい強くなるか、事前に情報を集めるか、でも新種でもいたら。対峙してしのいで情報を集められるように――」

「よし。いいぞ」


 途中から思考をそのまま口にし始めたバルディをハン師範が止めた。


「魔物を過小評価するな、という話だな。あれを体験してそうできる奴はそうそういないだろう」

「はい」


 バルディは頷いた。

 何度殺されたことか。

 バルディがまだ未熟であることを差っ引いても、まだまだ過小評価などできそうもない。


「そもそも剣は魔物よりも対人向けの武器だと、これまでにも教えてきたが。だからといって戦闘技能者が魔物との闘いを無視するわけにはいかん。人類の敵は魔物だ。対人はその次。少なくともそうでなければならない。それに剣にも利点はあるし、上達すれば剣術大会で見るような理不尽を示すことができるしな」


 バルディはまだできないが、遠くのものを切ったり、魔法と組み合わせたりと、剣の弱点を補い、強みを伸ばす方法はある。

 同時にそういった者から身を護る術もだ。

 剣術大会本選の戦いは、そのいい見本である。


「魔物にもレベルがあるらしい。そして同レベルの魔物を安定して倒すためには条件が二つ。相応のクラス、スキル、装備を揃え、四名以上で当ることだ。可能なら、役割分担して連携したい。だが、いつも都合のいい条件を満たせるとは限らんし、剣士を含めた戦士は戦えないものを護るためにいる。死ぬときは一番最初であることが理想だ。もちろん死ねば仲間も皆死ぬ」


 生き延びること。護ること。一距両疾流の根幹であると教わっている。


「だから経験を積め。そして得たものを修練を通して身につけろ。毎日は来れないが、鍛えてやるし助言もしてやる。もちろん領地経営の勉強もな」

「弱音を言うつもりではないですが、どちらかに集中したいですね」

「休憩と気分転換と思え」

「はい」


 欲を言えば時間がもっと欲しい。一日が倍くらいになればいいのに。

 バルディは心底そう思った。


「それから、連携と動きを見せるためにジョウも参加させるからな。アレもさらに鍛えられることになるが、超えてみせろよ?」

「は、はい」

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