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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
剣士編

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剣初心者うさみ 75

「そういえば、その格好もよく似合ってますね」


 待ち合わせの会話がひと段落して移動を開始してから、バルディは厳命されていた指示を思いだしたので実行した。


 まずは女の子の服をほめろ。

 女の子は時と場合と相手によって姿を変えるものであり、それは結構な労力を使うものである。なので違いに気づいて称賛するのは男の義務である。

 ほめられるのが嫌な女の子はいない。

 ただし相対的に普段の格好を落とすような言い方をしないよう気を付けること。

 あと金額を想起させるのは禁物。迷ったら「似合っている」が無難だが、相手のそう思われたいという意識をつかめたなら具体的な形容に挑戦すべし。


 まだまだ続いた姉たちの助言だが、これくらいにしておこう。

 まず、といわれていたが、本題のことが頭にあったために少し遅れてしまった。これくらいは許容されるだろうか。

 恐る恐るミーナを見ると、いつもの無表情のようで少し顔に赤みが差しているように見えた。


 今日のミーナはお仕着せの使用人服でも道場の修練着でもない姿をしている。

 そのどちらもすらりとしなやかでよく動くミーナに大変似合っているが、今日の姿はまた違った魅力があるようにも思う。


 青いリボンで装飾されたつばの広い麦わら帽子に広い襟のついたリボンと同じ色の生地に白と青の糸で刺繍が施されたワンピース。同じ色の糸を使って立体感を表現している。なかなかの腕前といって良いだろう。

 襟元には白いリボンが結ばれている。

 足元には紐と帯を組み合わせた耐久度より見た目を重視したもので、これも青。甲の部分で可愛らしく結ってある。

 肩から提げたポーチは革の素材を生かした色で、丁寧に使い込んでいる物のようで、大事に扱われていることがわかる。ただ、ミーナの年齢からすると年季が入りすぎているように見えた。


 これを見てバルディがわかることは、まずリボンが好きなのだなということだ。これは見てのとおりである。

 今日は走るつもりはないのだろうということ。足元を見ればわかる。

 とっておきのよそ行きの服であろうこと。普段着として使っていれば、どうしても現れるよれが見られない。もっとも、普段は使用人服を着ているのだろうから、切る機会がなかっただけかもしれない。


 そしてなにより、ミーナは可愛らしい格好も似合っているということ。


 普段バルディと互角以上に競い合う相手であるため、どちらかというと凛々しさが先に立つ。ついでにいえば、そのしなやかな動きに、本気を出した時の獲物を狙うような目つきは戦慄を覚える。怖いということだ。

 そんなミーナがこういった可愛らしい姿をしている。新たな発見であった。


 なのでそれを伝えることにした。


「普段は凛々しい姿も素敵だけれど、今の可愛らしい格好も似あっていていいですね。ひとつ気になるとすれば――」

「えっ、いや、えっ? き、気になる? ですの?」

「耳が帽子で隠れていることかな。ミーナの素敵な特徴の一つだしね。ただ、その帽子も似合っているから甲乙つけがたい問題だね」


 表情をあまり顔に出さないミーナだが、獣人族の特徴ともいえる耳はそこを多少なりとも補ってくれることを、バルディは知っていた。

 猫系と聞いているが若干丸っこいあの耳だ。

 ピクリピクリと動いているのを見るとミーナの感情が読み取れることがあるのだ。

 人族のそれよりも耳としての性能も高いらしい。

 それから、フェイントをかける時ピクリと動く癖があるので、修練の時利用させてもらっている。

 最後に、見るからにふわふわしていて触ってみたい。が女の子の体にむやみに触らないこと、耳とかありえない、と幼少のころから姉たちに叩き込まれているので触ったことはない。

 そんな素敵な耳なのだ。

 まあ、一年も付き合えば耳が見えなくとも表情は読めるようになったし、隠れていても意思疎通に問題はない。

 奇襲を仕掛けられたら不利になるが、ミーナがバルディを襲うことはあるまい。これも問題なし。

 隠れていてもおなくても我慢しているので触らない。問題なし。


 バルディがうんうんと頷いていると、なぜか口をパクパクさせながらちいさくあうあう言っていたミーナが声を絞り出す。


「バルディは、その、逢引とか、経験多いですの?」

「なんで? 逢引なんて経験ないです」

「そ、そうですの……じゃあその、わたくしのことを好いているですの?」


 そういうと、ミーナはなぜか顔を隠すように帽子のつばを下げた。

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