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剣初心者うさみ 66

 子どもが生まれるというのはいいことだし実際に皆、おジョウさんも含めて喜んでいる。

 一方でそれによって複雑な立場になるおジョウさんがいる。

 なぜ全部うまくいかないのか。

 十五の娘がいるのに子どもを作ったハン大先生が悪いのか?

 いや、ケンが生まれたことは喜ばしいことだと述べたばかりだ。

 ではおジョウさんが悪いのか。

 そんなわけがない。


 バルディの頭の中をぐるぐると思考が巡っている。

 それを断ち切ったのはやはりおジョウさんの言葉であった。


「それで、バルディくんなんだけど」


 ついに自分の名前が出たことで、バルディは考えを切り上げて話を聴く態勢に切り替えた。


「我が家としてはバルディくんは内側に取り込みたいの。それはさっき話したわね」

「だからですか」

「それだけじゃないのよ。身元もしっかりしているし、修練も真面目に頑張ってる。仕事もね、今まで担当してたお母さんがわかりやすいって褒めていたわ。それぞれいい評価がついてて。それでお父さんがね。お酒の席だったけど」

「なるほど」


 歳回りを考えると、将来性についてはどちらにしても賭けになる。それならば他の部分で取り込みたい要素があるバルディに賭けるのは一つの手である、と。

 そういうことらしい。

 積極的にそうしようということではなく、こういう考えもあるなという話。



「それだと候補ではなく、候補の候補くらいの話なんですね」

「ええ、そう、そうね。具体的な話ではまだ全然ないの。ちょっと頭の中に引っかかってたから、ぽろっと出ちゃっただけなのよ。混乱させちゃってごめんなさいね」


 実際そういう話ならギリギリまで引き延ばして考えるところだろう。

 おジョウさんの適齢期とされている年齢はもまだ四年あるのだ。

 ケンの成長を見守りつつ、考えていけばいいのだろう。


「そういうことなら、よかったです。まだ結婚とか、よくわからないので」

「そうよね」

「おジョウさんは素敵なお姉さんだと思いますが、結婚となるとまだ想像が」

「ふぇっ」


 なぜかおジョウさんが固まった。

 よくわからないが、驚かされた仕返しになったかもしれない。

 ついでなので、もう一つ気になったことを訊いてみた。


「そういえば、おジョウさんはどう思っているんですか。環境のことではなく、感情の話ですけど」


 立場の話はたくさん聞いたが、おジョウさんが実際どう思っているのか。

 一度は収めた疑問を、尋ねた。


「えっ……と、その、バルディくんはね、かわいいなって思ってるのよ。悪い意味じゃなくて。立場上見てきた経験上、男の子って今のバルディくんくらいの歳からどんどん大人になっていくのよね。どんどん変わっていくの。だから今このかわいい子がどう成長するのかなってその」

「あの、私についてではなく」

「えっ、あっ、あははははは」


 なぜか早口になったおジョウさんが自分のことを語るので、気恥ずかしくなったバルディは途中で声をかけて止めた。

 バルディは結婚のこと自体について尋ねたつもりだったのだが、おジョウさんはバルディをどう思っているかと問われたと思ったらしい。

 確かにそう思ってもおかしくない流れだったかもしれない。


 おジョウさんは目をそらして乾いた笑い声をあげた。顔の色が赤かった。

 バルディもなんだか顔が熱かった。

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