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剣初心者うさみ 56

 怪我をしてから荘園にある道場の屋敷に泊まることとなった。

 だが、骨折以外の傷や打ち身は一晩寝ているうちに治ってしまった。


 うさみのつかった【治癒促進】という魔法のおかげだろう。

 そしてバルディもスキルを得ているという。自分の怪我からの回復を早めるスキル。【回復力】というらしい。

 おぼえたてでそれだけでは効果は薄かったが魔法との相乗効果で驚くべき速さとなったそうだ。

 一距両疾流の門下生に見た目怪我人が少ないのは、このスキルのおかげなのよと、世話をしに荘園まで出張って来てくれたおジョウさんから教わった。

 つまり見えないところで怪我人が多く出ているということ?

 バルディは道場の闇を知ってしまったのだ。恐ろしや。


 それはさておき、ものすごく腹が減る。

 食べないと体がせっかく鍛えた分を消費して回復にあてるのだと脅されたので、一日()食も、山盛りで用意していただいた食事を平らげた。

 用意してもらえるだけでもありがたいのだが、脅かされるとそのありがたみが薄れるのは気のせいだろうか。

 右腕が固定されているので一本使えないが、幸いにも左右どちらも同じように使えるための修練をしてきたために、食事程度で苦労はない。

 幼子ではないのだから、人に食べさせてもらうようなことになっていれば恥ずかしくて顔から火を噴くところだっただろう。

 困るのは用を足す時くらいだが、これも手伝ってもらうわけにもいかないので何とかした。



 さて、療養生活は長くはない予定であるそうだ。

 腕も三日あれば完治すると断言されたのでそうなのだろう。


 魔物と戦えば四肢の一本や二本食いちぎられることもある。

 剣士と戦えば腕の一本や二本切り捨てられることもある。

 繋がっているのだから大丈夫。

 気になるなら神官を呼ぶが費用も掛かるし【回復力】の修練のためにも自然に治したほうがよいということだ。



 また、バルディの体で応急処置の講習をしたそうだ。

 戦いを生業にするなら負傷への対処は覚えるべし、と。

 もちろんバルディは意識を失っていたので参加していない。

 しかし負傷した時のためのスキルは得ている。勘定としてどちらがお得かはわからないが。

 他者の負傷に対する処置については次の機会を待つか希望すれば座学の時に教えてもらえるらしい。

 実地で覚えるほうがスキルが身に付きやすいそうだが。



 ともあれ、バルディは三日間食って寝る生活をすることになっている。

 細かく言えば【回復力】の修練になるのだろうが。

 それでも上げ膳据え膳の生活である。


 これが、実力で勝ち取った成果ならいいのだが。

 今回のは怪我をした結果だ。

 それも、自身の過失によるもの。

 事故ではなく過失。少なくともバルディはそう感じていた。

 過失の原因は、自分が同輩の二人に劣っているという悩みだった。

 集中力を欠いていたのだ。

 競争で勝てないのに競走中に別のことに意識を向けてはますます勝てまい。

 そして事故の危険があるのに集中できなかったのだから、なるべくしてなったとしか言いようがない。


 バルディは静かに落ち込んでいた。

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