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剣初心者うさみ 55

 修練内容によっては怪我人が出る。


 今までは、比較的怪我をしにくい走り込みと素振り、結構怪しい球打ちで、幸い大きな怪我に見舞われることことはなかった。


 だが山中を走る、それも競争してとなると、怪我人が出ることは避けられなかったらしい。

 障害物が多く見通しも悪い。

 修練を積めば先輩方のようにすいすい走れるかもしれないが、その域には達していない。

 そうならばこういうことが起きるのも当然の帰結であるかもしれない。


 などと、バルディは脂汗をだらだら流しながら考えていた。


 転んで、落ちて、くるくる回って気がついたら腕が動かない。

 他の部位もあちこち打ち付けたのか、違和感があり力が入らない。

 未だかつて感じたことない痛みがバルディを襲っていた。

 痛すぎて全然痛くないような気がするほど痛かった。


「大丈夫か!」


 滑落したバルディを追って先輩が急坂を下って来てくれた。

 しかしバルディは口をパクパクさせることしかできなかった。声が出ない。


「意識はあるようだな、無理しなくていい。おーい! こっちだ!」


 先輩は、上に声をかけてからバルディの様子を確認する。


「よし。大怪我だが命に別状はない。腕が折れてるな。いや、ここで怪我できて運がよかったなあ、バルディ」


 何言ってるんだこの先輩。

 腕の位置を動かされながら、バルディはいう目で見返した。


「自分で腕を折ららなくてすむぞ」


 何言ってんだこの先輩。


「怪我の対処の修練のために自分で怪我をするんだよ。自分から怪我をしようってのはキツイらしいぞ。俺もバルディのように修練中に怪我をしたから自傷はしたことないからわかんないんだがな」


 何やらせてんだこの道場。


 バルディは痛くて何を考えているのかわからなかった。


「バルディ、大丈夫!?」

「おい、ひどい血が……!」


 同輩二人の声がする。

 気のせいか、ですのが取れていた気が――。



 そして気が付くと、バルディは平らな場所にいた。

 地面に直接ではなく、布か何かの上に寝かされており、周囲に人の気配がした。

 意識が飛んでいたのか。

 その間に移動させられたようである。

 痛みはある。しかし、先ほどの意味が分からないほどの痛みではなく、ただ全身に痛む箇所があった。

 中でもやはり腕の痛みは強い。

 また、痛い場所が熱を持っているようにも感じる。


「じゃあ、復習。神官に頼めばちょっとした怪我は即座に完治する。頑張って修練を積んだ神官なら、骨折なんかも元通りもどる。癒しの魔法が得意な神様となんでもいける金銭神様であれば、死んでなければ即座に完治できる。喜捨が必要だけどね」

「あっ、うさ姉様、バルディが気付いたみたいですの!」


 声の方向に目をやると、いつも道場の隅で素振りをしているはずのうさみが、チャロンとミーナ、そしてバルディたちについていた先輩三名の前に立っていた。

 まるでうさみが教えているようだ。


「バルディ、今、【治癒促進】の魔法をかけてあるんだけど。わかるかな? 人間の回復力を強化する魔法だよ。すごいお腹が減るんだけど」


 先ほど感じた熱がそれだろうか?

 そして言われてみればお腹がすいてきた。

 と思うと、口元に吸い口を押し付けられた。


「回復に必要な栄養が詰まった薬液だよ。頑張って飲んで」


 薬液というから苦いものかと思ったが、甘かった。

 するすると喉を通る。

 と思ったらむせた。体がこわばる。痛みが。

 そして体の熱さがさらに。


「怪我の場所を意識して。治っていることを感じて。そして、治っているのではなく、治しているんだと。それで治すことを早めて」


 早めてとは。


「そういうスキルがあるの。だからできるよ。先輩たちも覚えられたからバルディも覚えられるよ」


 そんなー。

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