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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
剣士編

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剣初心者うさみ 54

 一般に、持久力は女性が、瞬間的な力は男性が強いといわれている。


「ミーナが一番速いな」

「長距離だとチャロンの方が早いですの」

「どちらもビリ……!」


 一距両疾流の荘園にある山の麓で指導を受けていた。

 これも新しく増えた修練のためだ。

 その内容は、山の中を走るというものだ。

 先輩方が何年も走った跡があるとはいえ障害物が多く、迷子になったら遭難事件になる。そのため、同数の先輩がつく。これは監督だけが目的ではないが。

 その条件下で既定の距離を競争するのである。

 街の整備された平坦な道とは違い、よく転んで怪我もする。それもまた別の修練につながるのだが。

 バルディたちは軽装だが、先輩方は鎧をつけてすいすい走っている。

 今のバルディではとても無理な身のこなしであった。だって鎧って重い以前に動きづらいのに。



 さて、バルディ、チャロン、ミーナの三人では、持久力は男性であるチャロンが、瞬発力はミーナが、それぞれ最も優れていた。少なくとも走る場合は。

 一般の常識とは逆である。

 そしてバルディはどちらでも二人に勝てていない。

 身長はこの一年で三人とも一回り成長したのだが、現在はバルディとミーナが同じくらいでチャロンが低めなので足の長さはあまり関係ない……いや、ミーナはバルディより足が長い。

 足が長い方が短距離で有利で短い方が長距離で有利なのだろうか?

 修練の条件は同じなのだから、それ以外の要素、才能という奴だろうか。


 更に一般に。

 女性の方が成長が早い。

 虫人族は持久力に優れている。チャロンは虫人族ではないが虫人族の血が混じっている。

 獣人族、とくに猫系だと、瞬発力に優れる。ミーナは猫系の獣人族である。


 性差より種族差の方が影響が大きいのかもしれない。

 成長の速さも個人差があるはずだ。

 なので今この時に劣っているとしても……。



 いや、やっぱ悔しい。



 バルディはぐぬぬした。

 地団駄を踏むのは我慢した。


 速く走ることが出来る、というのは子どもの頃は英雄である。

 バルディたちくらいになると違う価値観も入ってくるが、それでも足が速い=カッコいいの図式は失われるわけではない。

 バルディは男の子だった。


 しかし。

 修練は徐々に厳しくなってはいるが、チャロン、ミーナと合わせて一律である。

 自主修練もまだ認められていない。

 成長期はまだまだこれからで、ひと段落つくまでは。

 だから差を詰めるのは難しい。

 だからといって。

 しかし。

 うーん。


「うん、まだ焦る時間じゃあ――」


 なんとか自分を宥めようとしたところで別の要素を思いつく。


 よく考えたら修練以外の日常生活でも差があるのではなかろうか。

 チャロンは肉体労働、ミーナはよくわからないが使用人として働いているはず。

 バルディは座って計算している。


「うおー」

「どうしたバルディ」

「ですの?」


 悩み多き日々であった。

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