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剣初心者うさみ 47

 自分で言うのもなんだが、バルディは一距両疾流道場の門下としては三下である。

 実家ガン屋の子息としても三男であり長男次男は健在で順調という、浮いた立場で価値はない。

 そんな今のバルディに意味があるとすれば、まあ看板だろう。

 一距両疾流道場か、ガン屋。

 とはいえ一距両疾流道場を訪ねてきているのだから前者と考えて間違いあるまい。


 一距両疾流が出てくるとすれば、向こうも豪打必倒流が出張ってくる。

 流派同士の争いは禁じられている。なぜなら死人が出るからだ。そしてお互いに関係する流派まで巻き込んで戦いが拡大する恐れがあるからだ。そうして剣の街の戦力が低下してしまうのは、剣の街の住人は誰も望んではいない。


 だが、門下生が闇討ちを仕掛けられたとなれば黙ってはいられない。

 親が子を守るように道場は門下生を守らなければならないのだ。

 なぜか、を突き詰めれば食っていくためだ。

 門下生を狙われて泣き寝入りする道場という風評が立てば、道場の求心力は失われてしまう。

 弱いと見られ、気概がないと見られ、情がないと見られてしまう。

 道場は武を持って身を立て、国の中に収まっている組織である。

 道場という商売は武を持たないものに頼られてなんぼなのだ。

 育成組織として、いざという時に頼る先として存在しなければならない。

 弱くて気概も情もないと評価されてしまえば、剣の仕事を持ってくるものもいなくなるし、門下生になろうという者も、いや、門下生もいなくなるだろう。

 その先は道場からチンピラの吹き溜まりに堕ちてしまう。

 そうなれば剣の街からの補助金もなくなるだろうし荘園も召し上げだ。


 面子を失えば人も兼ねも遠のいてしまう。そうなれば組織は維持できない。

 武力で飯を食うというのはそういうことだ。


 話を戻す。

 一距両疾流として動かざるを得ないとなれば、豪打必倒流もまた動かざるを得なくなる。

 やらかした門下生を切り捨てれば悪評は免れないのだ。

 一距両疾流を恐れたという風評が立てば以下同文だ。

 事態が発覚した以上、一距両疾流から門下生を護らない選択肢は、少なくとも、武力を前面に立てる限りはないのである。


 そしてもちろん、禁じられている流派同士の戦争が起きれば、どちらもただでは済まない。勝ち負けではなく、施政側からの罰により道場はなくなるとみてよいだろう。

 なので剣の街全てを敵に回す覚悟がなければ戦争などできない。

 道場を、そして道場に所属する者を護るためには戦わなければならないが、戦えば破滅。

 手詰まりである。


 ということを踏まえて、豪打必倒流ゴウゲンが今ここでこうしていることを考えるならば。

 こうすることで流派同士の戦争を回避できるのだろうか。


 何らかのケジメは必要だろう。

 しかし首謀者ではない者が命を懸けることだろうか。

 何か見落としてはいないか。


 仮にここでゴウゲンの首を落とすことにした場合どうなる?

 それで戦争は防げるだろうか。

 バルディにはそうは思えなかった。

 原則遺恨は残さないことが前提の剣術大会のことで闇討ちするような者がいるのだ。

 命を取って丸く収まるとは思えない。


 ではどうすればいい?

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