剣初心者うさみ 35
「あっ、そうだ。先輩方はどうされるのでしょう」
「二人出る予定だね」
若葉組は全部で十二人、バルディたちの下に二人。つまり先輩は十人いる。松竹梅組は別勘定だが年齢制限があるので子どもの部には出ないためこの度は無関係だ。
「他の人は出ないですの?」
「一度出たら出ないものが多いね」
「それはどうしてでしょう?」
「それを知りたいなら、直接尋ねたほうがよいだろうね」
「そうする、ます」
ということになった。
先輩方とは話をしたり野球をする仲になっている。
ということでバルディたちはおやつの時間に話を聞くことにした。
「一度出場したらわかるぜ」
「一回でいいかなって」
「最後だからせっかくだし」
「ふっふっふ。今年もやってやるぜぇ」
意味のありそうな情報は得られなかった。
別途調べたところでは、例年だと予選と本選に分かれており、一距両疾流若葉組は本選進出経験者は少ないそうだ。
これを聞けば一距両疾流若葉組弱くない? と思うことだろう。
実際弱いのだ。
若手の育成方針として、一距両疾流は身体ができるまでは無理させないとしている。
しかし、スキルやクラス、レベルを最大限活用すれば年齢関係なしに強くなれる。子どもでも年寄りでも男女の区別もなく。
なので、相対的に弱いといえる。本格的に鍛え始めるのが十五歳頃となるので、その直前の十四歳の頃が最も差が大きいだろう。
なお、今回出場予定の二人は十四歳である。
では、勝てないから出ないのか、と尋ねると。
「なくはないけどそれだけじゃないわよ」
とのことだった。
周りの先輩も苦笑いしながら頷いていたので、先輩方の中ではもっともな意見なのだろう。
もっと具体的なことを教えてくれればと思ったが、教えてくれない。
自分で体験しろということらしい。別に道場の方針というわけではなく、暗黙の慣例のようだ。
なぜそんなことになっているのかは、参加すれば知ることが出来るのだろう。
といったような話を集めたバルディたちは。
「出場するなら応援にはいくですの」
ミーナは主家の方針で出場はしないとのこと。
ヤッテ家は主催側に名を連ねていることもあるが、剣の街の武に依らない家という立場がのためだという。
「稼ぎ時なんだよな」
チャロンは、経験に対して、参加費とお祭り帰還の収入を天秤にかけて悩んでいたが最終的に不参加を選んだ。
期間中は働いているので見には行けないが出るなら応援するわ、働きながらだけど。
ということになった。
最後バルディが残ったので。
「じゃあせっかくだし出場してみよう」
道場が積極的ではないので無理に参加する必要はない。
しかし、三人とも出場をしないと先輩方が苦笑いしている理由がわからないままになってしまう。それはちょっと気になるし、まあなんでも経験だろうと軽い気持ちであった。