剣初心者うさみ 33
「バルディは剣術大会に出ないのかな? 子どもの部があったろう?」
「あー。どうなんだろ。先生からは何も聞いてないですね」
という会話を下の兄とした日の翌日。
「大会なあ」
「そもそも一対一で打ち合う修練をしていないですの」
「だよね」
修練の準備中、三人で話す。
剣術大会。
正式な名称はもっと長く、つまり剣の街が主催する一年に一度のお祭りだ。
普段はいさかいを防ぐため、慣例として他流試合はあまり行われないのだが、剣術大会の時は別である。
剣の街に居を構える道場の代表に一般参加枠を加え、一対一の勝ち抜き戦を行う。そしてその年の最も強い剣士を決めるのだ。
とはいっても、師範級はあまり出場しないのだが。
それでもこの大会で優勝すれば剣の街、いや周辺国一帯で最強の剣士を名乗ることが許される。
そんな大会である。
そのお祭りの前座の一つとして、十四歳以下限定の子どもの部がある。
十四歳以下とはいえ剣の街だ。馬鹿にできない腕の持ち主がそこかしこにいる。
幼いころから剣を振っている者も多いため、剣スキルが高い者には事欠かない。
なので前座であれ、子どものやることと馬鹿にできない程度に見ごたえがあるという評価の大会だ。
当然やんちゃなだけの子どもだけでなく、道場に通っている将来の職業剣士も名声と実益と腕試しのために出場する。
さて、そういう大会に、素振りと球打ちと野球ばかりの自分たちが出て、剣を持って向き合って打ち合う。
そんな姿を想像してみよう。
「いまいちピンときませんね」
「ですの」
「うーむぅ」
唸るチャロン。
「ちょっとそこ立ってくれるか?」
「はいはい」
バルディはお互いが剣を持っていると仮定して、お互いが構えても届かない程度の間をあけて立った。
「これくらいかな」
「だな」
向かい合ってみると思う。
「これ、踏み込んで切りかかっても止められそう」
「二人がかりで切りかかったらだめか?」
「ダメに決まっているですの」
一対一である。
「最初の一撃は避けるか止めるかするよな」
「とすると、止めさせて力で押し切るか、もう片方の手で追撃するか、でも相手も手は二本あるよね」
「剣と盾が主流だと思いますの」
「盾で止められて、反撃されて、うー、後ろから味方が攻撃してくれればらくなんだがなあ」
一対一の経験はないが球打ちで二対一の立ち回りは経験しているので、思いつくのは二人で一人にかかる方法ばかり。
「うーん、もう。やってみないとわからん!」
「ですの」
「まあ先生に聞いてみてからだし」
「何の話かね?」
話していると師範代がやってきた。