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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
剣士編

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剣初心者うさみ 26

 帳簿をつけていると、なんでこんなものを購入しているのだろうというものがしばしばある。

 例えば粗大ごみ(机)である。

 机といえばまあ木製であり、分解すれば焚き付けくらいにはなる、逆に言えば分解する手間がかかるので重量比で薪を買うよりは安くつく。

 なので節約の一環かと思っていた。

 しかしながら、薪割りの際に机を分解した記憶はなく、そして粗大ごみ(机)はそれなりの頻度で買い入れている。

 家具がそんなたくさん壊れるものかと思うが、購入先が酒場であることを考えると、酔っ払いが暴れて壊れたものを買い取っているのだろうか、などと、いろいろと想像するのも、バルディは楽しんでいた。



 さてそんな粗大ごみ(机)の謎が解ける日が来た。


「今日は机を分解して木剣を作るからね」

「は?」「えーっ?」「ですの」

「はえーですのじゃあないよ」


 はえーですのってなんだよという疑問は無視して。

 その日、新しい修練をすると聞いてワクワクしていたバルディたち三人は、ナイフを渡され木工をするよと言われたのである。

 それも粗大ごみから。


「どういうことでしょう?」

「なんで机なんだ、ですか?」

「どうせならちゃんとした素材から作りたいですの」


 いまいちピンとこない修練内容に、三人は師範代に疑問をぶつけた。一人疑問ではなく要望だがですの。


「目的としては、武器を取り上げられた時など、手元に剣がない場合調達する能力を得ることだね。剣がなくても、代わりになるものがあれば剣のスキルを使える。少しでも戦力を確保できるわけだね」

「ナイフ持ってるならナイフで戦った方がよくね? っす」

「その方がい場合もあるけれどね。攻撃範囲が広い方が有利なのはすでに教えた通りであるし、剣スキルを活かすにはやはり長さが足りないからね。手刀でも使えないわけではないがね」


 最近喋り方を学んでいるチャロンだが、思ったことをどんどん尋ねる質は変わっていない。


「なぜ机かというとだね、流派の始祖様が――」


 昔話が始まった。

 師範代が語ったのは、捕まって武器を取り上げられた始祖様の脱出劇だった。

 その最中、敵の斧使いを相手に机を使って立ち回り、追い込まれるも相手の攻撃を利用して机の脚を切り出し剣の代わりとしたところから逆転、斧使いを出し抜いて脱出に成功したのだという。

 師範代の語り口調はなかなかの名調子で、チャロンなどは見るからに話に呑まれ、ミーナもいつものすました顔は維持していたがところどころで体が反応していた。特に山場で語りに力が入ったところで耳がぴくぴく動くのだ。

 かくいうバルディも師範代これでも食っていけるんじゃないかと思った。


「――というわけで机から木剣を作るようになったわけだね」

「始祖様すげえ!」「ですの」

「ま、加えて、机は様々な(・・・)場所にあることと、仕入れが安くつくこともあるのだけどね」

「ですよね」


 落ちがついて、さっきまでノリノリだったチャロンが愕然とし、ミーナの耳が伏せられた。

 改造するに手ごろな机は、まあそれなりにあるだろう。高価なものは形状が凝っていたり足ではなく板で組んであったりなどで向かないかもしれないが。

 ただ一般的な足が四本の机ならつまり棒が四本あるわけなので木剣に改造するには適当かと思う。

 また、材木よりは机の方が手に入れやすい。特に街中にはそうそう材木は転がっていないのだ。

 ついでに材木より粗大ごみの方が安くつく。残った部分は炊きつけにすればいい。

 天板などは再利用できるかもしれないが、帳簿上では売っている様子はないので何かに使っているのか、薪とは別に分解して焚き付けにしているのか。


「さてそれでは始めますからね。大事なのは柄。手で握る部分ですね、片手持ち、両手持ち、自分の手にちょうどいい太さというものを――」


 考えていると師範代の説明が再開されたので、バルディは慌ててそちらに意識を戻すのだった。

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