剣初心者うさみ 15
「労働者チャロンを剣士へと導く」
「商人バルディを一距両疾流剣士へと導く」
「ミーナくんは従者のままでよいのだね?」
「はいですの」
翌日、バルディを含む三名はそれぞれの答えを伝え、うち二名がクラスチェンジを受けた。
ここで面白いことが判明する。
バルディと、先輩その一チャロンをクラスチェンジさせたのは師範代だ。
剣士と一距両疾流剣士の両方をクラスチェンジさせられるということは、双方を一人前以上に鍛えているということ。
バルディはすごいなあと思いました。
「すごいことはないのだよ? 道場破りを仕掛けて当時師範代だったハン師範に負けてね、許される代わりに入門とクラスチェンジをしただけだからね」
「そんなことが」
「道場破り! かっけえ!」
「失敗したからカッコよくないからね? 若気の至りというやつでね。失敗して命があるのは運がよかった。まあ、道場破りはやめておきなさい。我が道場としても禁止しているからね」
「破門ですの?」
「そうなるだろうね」
「ですって」「ですの」
「やらないから!」
比較的理知的な言動をする師範代が、若いころは見た目通り武威武威いわせていたという過去を知ることが出来たのであった。
おジョウさんが物心ついたころから居たいるようなことを何かの時に耳にしたので十年以上は前のことだろう。人に歴史はあるものだ。
さてバルディは一距両疾流剣士となった。
少しだけ剣士と迷いはしたが、道場の名を冠するクラスは、門下生としてはふさわしいと思ったのだ。もちろん、昨日の説明の中で、一距両疾流剣士を前提としているという話があったこともある。
しかし、先輩二名はそれぞれ別の判断をしたようであった。
ガキ大将然とした男子の先輩、チャロンは剣士を選んだ。
なんでも、剣士を極めるとなれるという剣聖というクラスを目指しているらしい。昨日の様子ではかなり一距両疾流剣士に傾いていたと思ったのだが、一晩考えて初志を思い出したのかもしれない。
ですのという特徴的な語尾のあまり表情が動かない女子の先輩、ミーナは、クラスチェンジしないことを選んだ。
従者というのは偉い人の部下としてのクラスであるので、上司の意向か、職場の都合か、まあ本人のこだわりかもしれないが、ともあれ結果はこの通り。
従者は戦闘以外のスキルを広く領分としているが、剣スキルは含まれていると師範代が言っていたのでそれも判断材料かもしれない。
今後ともに研鑽する仲間がそれぞれ違う道を選んでいるのはいいことなのか悪いことなのか。
「よいことも悪いこともあるからね。うまくよいところを生かしていけるよう指導するとも。君たちも頑張りたまえ」
「はい」「うす」「ですの」




