ゾンビ初心者うさみ 61
「あれだけのことをやらかしておいて、普段通り、まるで堪えてない様子だったのが、とんでもないなって話よ。今もそうやって魔法使っているしね」
「あー」
のんびりとした移動中、うさみはアップルとおしゃべりしながら歩いていた。
女性や老人が周りにいる、けんた君の操作を並行している。
ついでに、けんた君の座席にいる少女に光の線で芸を見せていた。
芸といっても三秒ほど軌跡が残るようにした光で様々なものを象る程度のものだ。
このくらいは片手間でこなせなければ、光で魔法陣を描くような真似はできないだろう。魔力の消費も些細なものだ。
それにもちろん、アンデッド探知も欠かしていない。今はアンデッドよりも危険な虫でもいないかを調べるべきかもしれないが、虫でフィルタリングすると該当が多すぎてうまいやり方を検討中である。大きさだろうか。だが小さい毒虫とかもいるし群る場合もあるので虫の脅威度は大きさのみで測るのは難しい。
なんてことを考えながら先ほど何を言おうとしたのかという話になったのだ。
「日頃の積み重ねだよ……というだけでもないけど、あるていど再現はできるよ」
「教えられるってことかしら?」
「うん、そう。やる気と根気は必要だけど、誰でも。人類なら」
うさみは日常的に鍛えている。それも、世界の仕様、人類へ与えられた神の加護を利用してである。
基本的に、スキルは使えば使うほど熟練する。より良い使い方を模索、要するに意識して考えながら訓練すると、その速度は上がり、周囲の状況でも変わってくる。
そして天才だろうが凡人だろうが、神の加護で与えられたものは大差なく、過去の天才が辿り着いたところまではたどり着けるのだ。
そこから先に進むには天才性か長い研究が必要になるかもしれないし、過去の天才以上の天才ならばスキルより早く同じところまでたどり着くかもしれない。
だが、凡人でも追いつけるという点は変わらないし、到達点が更新されれば後追いでまたそこまで進めるのだ。
この点はうさみのような凡人には都合がいい話である。
諸々合わせると到達すべき姿を意識しながら命の危険の中で不利な条件と回数をを重ねて訓練するととてもよく成長できるのだと、うさみは認識している。
うさみの場合は繰り返しの中で様々なものの到達点を見てきたのでそれらを参考にできる。
また、本人のレベルを一にして常に相対的危険度を高めたり、心身に魔法で負荷を掛けたり、自身の質量を魔法で増やしたりちょっとしたこと、例えば歩くのに地面を踏まず魔力の力場を踏むなどで都度都度魔力を使ったりと、魔法や魔力の操作による訓練を効率化と常態化している。
普通に過ごす中でスキルを高められるように工夫しているのである。
さらに場合によってはカ・マーゼ王国の宮廷魔導師に教えたより危険を高める方法も使う。
どうしてそこまでするかといえば、単純にこの世界が危険だからである。
必要最低限の能力を持っていなければ怖い。
先日飛んできた火竜王とかが現れたりするのだ。
逃げられる程度の能力は持っていたいに決まっている。だって怖いもん。
どうしようもないならともかく、がんばれば辿り着けると感じたならば、やるしかないだろう。
なんと言っても繰り返しているのだから、解決できなければずっと恐怖を抱えることになるのだ。
臆病だから多少無理してでも鍛えようと思い、実行したと、そういうことだ。。
そんな話を繰り返しのことはぼかして長生きだからとごまかしながら簡単に伝えた。
「臆病なやつが命懸けの訓練するのがすでに変だわ。やっぱ変人ね」
アップルにだいぶ引かれた。
一方で、けんた君騎乗中のお嬢様が。
「難しいことはわからないけどすごいのね! あたしもこのきれいな魔法使えるようになれるんだよね!」
興味を示した。よい子だなあとうさみは思いました。まる。




