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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
ゾンビ編

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ゾンビ初心者うさみ 52

 金銭神の神官は、捧げたお金に比例する量の金貨を定期的に神様から受け取ることが出来る。


 早速授かった金貨によって、エルプリはうさみから“すべて”を買い戻した。

 そうして衣類を身に着けてエルプリがうさみに尋ねる。


「のう、うさみ。ものすごくたくさんの金貨と引き換えたものを、これっぽっちの金貨で取り戻すのは辻褄が合わぬのじゃなかろうか?」

「物の価値っていうのは、時と場合、それに持ち主によっても変わるんだよ」


 砂漠で水の価値が高まるように。

 お金持ちにとっての金貨一枚と貧乏人にとっての金貨一枚が違うように。

 何にどれだけのおカネを支払うか、というのは流動的かつ臨機応変なものである。


「詭弁なのじゃ」

「まあそういうのはいいじゃない」


 百分の一以下になった金貨だが、元の量が量なのでそれでも結構残っている。

 とはいえ残念ながらこの金貨はすでに無用のものだ。


 金銭神の神官は、神聖魔法を使うのに金貨を神様に捧げる必要がある。

 だがしかし、神様から自身が授かった金貨ではだめなのだ。

 神様が何を考えてこのような仕様にしたのかは、まあ想像はできるけれども、現在の状況にはそぐわない。

 これほど人がいなくなるという状況では金貨の価値は暴落するということだ。


「目的の魔法は使えるようになった?」

「うむ、【大浄化】と【聖域】を覚えたのじゃ」

「金貨を捧げるノルマを満たさないといけないから、半年くらいしか維持できないけれど、とりあえず今回はいけそうだね」


 うさみは金貨を儀式の間の隅に押しのけた。

 そして呼び寄せの魔法で新たに金貨――が入った袋を呼び寄せる。

 大きな背負い袋だ。

 金属がこすれる音が響いた。

 うさみがちっちゃいぶん余計に大きく見える。

 重量はうさみ数人分に匹敵する程だ。

 ここから行く先は地面に置いとくわけにはいかないので用意しておいたものである。


「それじゃいこうか。【送還の魔法】」

「わかったのじゃ――」


 背負い袋を背負ったうさみは、エルプリに抱き着いて魔法を使った。

 送還の魔法。

 呼び寄せの魔法の逆を行う魔法だ。以前、召喚されたときの反省で用意していた魔法である。

 つまり、呼び寄せた存在を元の場所に還す。

 その際、身に着けているものを一緒に送ることもできる。

 なのでうさみはエルプリに身につけられたのである。


 こうして巨樹へ移動した。


 余談だが、儀式の間がものすごい光ったのを心配して様子を見に来た神官が、部屋の隅の金貨を残して誰もいなくなっているのが確認され、ちょっとだけ騒ぎになったらしい。

 ちょっとだけ。

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