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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
ゾンビ編

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ゾンビ初心者うさみ 51

「あ、ちょっと違った。服だけじゃなくて、エルプリが持っているありとあらゆる財産を……いや、それより、エルプリ自身を含めたすべての方がいいかな。全部を、このおカネと引き換えてほしい」

「どういうことなのじゃ? いや、うさみを疑うわけではないのじゃ」


 混乱しながら首を傾げ、すぐにまた逆方向に首を傾げと忙しく動くエルプリに、うさみは告げる。


「エルプリが所有する資産のすべてを、この金貨が占めるという状況が必要なんだ」

「ううん? よくわからぬが、わかったのじゃ。身に着けているものを渡して、わらわとわらわが持つすべてを交換すると宣言すればよいじゃろうか?」

「うん。それでここに拇印を」


 こうしてエルプリはすっぽんぽんになった。

 そしてすべてをうさみに渡し、うさみがさらさらと書き込んでから差し出した紙に拇印を押す。

 自身のすべてを売り払うなんてことは常識外のことだ。あとで絶対にやっちゃダメだよと教えないといけないだろう。


「すべてこの金貨と交換するのじゃ」

「はい。これで、エルプリのすべてはわたしのもの。エルプリのすべての対価としてこの場にあるすべての金貨がエルプリのものになったよ。いいかな?」

「なのじゃ」


 エルプリが、あたりにある金貨を見回して頷く。

 しつこいくらいの確認を行う。これが結構大事なところ。


「……さすがにちょっと寒いないのじゃ」

「急いで終わらせようね」


 必要な手順とはいえ子どもの服を剥くのはかわいそうなのでうさみは速やかに次の手順に進むことにする。


「これからいうことを復唱して。神様に宣誓するから」

「のじゃ」



 金銭神リーネはおカネの神様。

 金貨を生み出して人に力を与え、金貨を介して力を借りる。

 金貨とは、人の豊かさである。

 金貨とは、人の交流である。

 金貨とは、人の代替である。

 金貨とは、人々の間で培われる力である。

 金貨とは、神に捧げるものを補うものである。

 金貨を以って祈りを捧げる。

 金貨を渡し、金貨を受け取る。

 金貨の力で神に力を請う。

 神様お金を払うので力を貸してください。



 金貨を媒介にあらゆる神様の力を借りることが出来る金銭神リーネへの祈りは、積み上げた金貨で代替できる。

 つまるところ最後の一行だけでいいのだが、それっぽくすることでわずかなりと神様に対する心構えができれば若干有利にならなくもないのでいろいろと付け足した。


 神聖魔法は神様への祈りの深さでその力が増していく。

 そして金銭神への祈りの深さは金貨の量で示される。

 だがそれだけではない。

 大金持ちの金貨一枚と、貧乏人の金貨一枚の価値は第三者から見れば同じだが、主観的には違うのだ。

 神様への祈りの深さは、どれだけ自身が持つものを捧げられるかという観点によっても示すことが出来る。

 それがすべてではないが、それを強調することは可能である。

 金貨は祈りの代替だ。

 しかし、金貨に加えて祈りを捧げればもたらされる加護はより強くなる。

 数値で示すのは不敬かもしれないが、感覚的には乗算で高まり、与えられる神聖魔法がより強くなる。


 いま、エルプリの財産は金貨のみである。エルプリ自身を含むすべてを対価に得た金貨である。これはエルプリ自身も認識している。


「すべての金貨を神様に捧げて」

「金銭神よ、ここにある金貨を全て捧げるのじゃ。わらわに力を」


 そしてその金貨のすべてを神様に捧げた。

 エルプリのすべては債権としてうさみが持っているのである。

 だから今、エルプリは金貨しかない。

 それはエルプリのすべてを神にささげたのとイコール。

 すべてをささげるとはつまり神降ろしに匹敵、いや、それ以上の神様への奉仕として解釈できる。

 そうなるように段取りしたのだ。

 相手が金銭神でなければ成立しないだろうある種の裏技である。

 そして、神様への敬意があっては思いつかないイカサマであるともいえる。

 力を授かるものがそういったずるをしようと考えていたら、通用しない。

 エルプリがうさみを信じ、神へと祈る。

 うさみがすべてを知らせずに段取りする。

 そうやって初めて為すことが出来るずるっこであった。

 


 儀式の間に積み上げられた金貨が光となっていく。

 視界全てが光に満ちる。


 そうして、光が消えた時、そこに高位の金銭神の神官がすっぽんぽんで立っていた。


「へ、へ、へくちゅん」

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