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うさみすぴんなうとAW  作者: ほすてふ
ゾンビ編

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ゾンビ初心者うさみ 44

 うさみの用件は大きく三つ。


 まず、屋根を借りること。

 当座王都に滞在する間、戦場から連れてきた人たちが休める場所が必要だった。

 これは食料を集めてくることを条件にすることで好意的に了承された。

 王都にはまだ痛んでいない食料が眠っているはずだ。


 当たり前だが食糧を扱う業者は街のそこかしこにあるし、少なくとも穀物など保存がきくものは様々な場所に保管されているだろう。

 日常食する者だけでなく、現在は戦時中なので最悪の事態を想定して籠城用、そうでなくても戦場に送るための保存食も増産、備蓄されているだろうことは想像できる。

 逆に不作の時のための備蓄などはそちらに回されているかもしれないが。


 都市一つ分の人口が無くなってそれだけ消費量浮いたと考えれば、そして自由に動けるならそういった食糧を回収することができる。

 神殿にこもるならジリ貧に変わりはないが、それでも限界を大いに伸ばすことが出来るだろう。


 次に巨樹のエルフの動向を伝えること。

 つまり突如現れた巨樹は捕虜にされたエルフたちの拠点であり、そこに住まうエルフたちは人族に良い感情を持っておらず、奴隷としてなら受け入れると言われているということだ。


 これを聞いた時、神官たちは大いに憤慨した様子を見せたが、故郷を焼かれて捕虜にされた者たちの生き残りであるという経緯を伝えると、消沈してしまった。やはり浮き沈みが激しい。


「破戒エルフ殿はそのエルフたちと同列ではないようだな?」

「別口だからね。わたしは生まれたのも街だし放浪中だったし」


 同じエルフであるうさみにも疑いの目が向けられるのはわかっていたことであるが、そのつもりならわざわざ伝えに来ないで急襲するか、あるいは食料を盾に下らせるかすることもできたということに気が付いた人がいて、怪しいけど合理的ではないことからうやむやになった。


「エルフたちはあの巨樹を拠点に動くつもりはないようだから、降伏するか、敵対するか、移動するかみんなで考えておいて。移動するならわたし、協力の用意があるから」

 戦場帰りの人たちの含め、住める場所を作るところまでは協力しようと考えている。

 もちろんエルフの行動範囲外に、である。

 せっかく助けた人たちがドレイにされるのは忍びない。

 エルプリはともかく他の連中については中立のつもりなのだ。前ボロクソに文句言われたし。


 幸い、ではないが、誰もいない農地は余っているのだから、これを護れるよう策を講じればよいのだ。

 移動さえ解決すれば、ゼロから始めるより楽なはずである。



 そして最後が。


「【大浄化】か【聖域】が使える人はいるかな?」


 どちらも、神降ろしほどではないが高位の神聖魔法だ。

 数十メートル規模で効果を及ぼすもので、前者はアンデッドなどを浄化する現状に特化した神聖魔法、後者は一時的に土地ごと神聖なものにすることで結果的にアンデッドを消滅せしめる神聖魔法である。

 どちらも、この状況では極めて強力な切り札になるだろうことは想像に難くない。


 しかしながら、使える者はいなかった。


 使えた者は神降ろし失敗の際に命を失った。

 もともと小国の神殿であることもあり、ここに至るまでのあれこれもあり、高位魔法を扱えるものはいなくなっていたのだ。


「それじゃあちょっとあとで金銭神の儀式場を借してほしいんだけど」

「破戒者がなにをするつもりだ!」


 破戒エルフうさみという経歴のせいか、まだ心を許してくれていない金銭神官がぷりぷり怒っている様子で怒鳴る。

 他の神官たちは食料とかいろいろな都合につき見て見ぬふりだが、同じ神様繋がりだと感じることも違うのだろう。


 人口が減ってお金のやり取りが難しくなるのでこの人も早晩破戒神官になってしまうのは免れないと思うのだけど。


「入信の儀式。非常時だし、許してほしいな」


 うさみはできるだけ同情を買えるように子どもに見える姿を生かしてお願いした。

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