ゾンビ初心者うさみ 41
「これじゃ、ちょっと足りないか。貴族の家とか商人の店を回ってみようかな」
王宮の宝物庫にある金貨を集めると、一万枚ほどに達した。
これは王家所有の資産がこれですべてというわけではなく、金貨という形で宝物庫に保管されていたものがそれだけだったということである。
それ以外の財宝の類は別にある。ところどころ歯抜けのようになっているのはそこにあったものを手放したからだろうし、武具の類はあまり見当たらない。戦争に持ち出されたか、解呪砲の砲弾にされたかだろう。
戦争には負け続きで、今回最後の決戦に挑んだ王国の残った資産として多いのかどうかは難しいところだ。
全財産吐き出せばもっと準備ができたのではないか。
カネを積んでも時間とマンパワーに限界があったのではないか。
防衛戦争であり勝ってもその後が続かなければ勝った意味がないので余力も必要。
いろいろな視点があるので何とも言いにくい。
まあそんなことより、現状では現金以外は不要だ。
うさみは地面に魔法陣をさらさらと書いてその上に見つけた金貨を積み上げて脱出した。
「次は……あっちは、実務やってるところかな」
うさみは、一旦エルプリと別れて王宮に忍び込んだ。
目的は金貨である。
秘密兵器開発や宮廷魔導師への指導などで何度か立ち入ったことはあるが流石に宝物庫の場所までは案内してもらった覚えがないので、先日つくったアンデッド探知魔法を応用して金貨探知魔法をでっちあげて辿り着いた。
対魔法の処置が合った形跡があるが、いずれも破壊されていたのでスムーズだった。
推定、アンデッド化の魔力にあてられて焼き付いたものと思われる。
王宮内のアンデッドはスルー。
うさみ単独であれば程度の低いアンデッドから身を隠すのはそれほど難しくはない。
これからやることを考えれば倒すのは無駄だ。
見知った顔もあるかもしれないことを考えると精神衛生上もその方がいい。
少額の金貨もひとまずスルー。
時間の都合もあるのでまとまった額を回収したい。
お城ならおカネがあるだろうという単純な発想だったが成果はぼちぼちといったところだろうか。
貴族街は結構な部分が巨樹に押しつぶされてしまい金貨を探すのは一手間かかりそうだったし、商人が多く店を構える一角は目的地を挟んで反対側であるので、一番手軽で成果を期待できそうな王宮から回ったのであった。
この分では貴族街から発掘する必要があるかもしれない。
そうなると本日中にすべて終わらせるのは大変そうだし。
「先に宿を確保するべきかな」
大臣の執務室と書いてあった部屋の金庫を分解して中身の金貨を取り出し、魔法陣を描いてそのうちに積み上げながら、うさみは次の行動を考えるのだった。




