使い魔?うさみのご主人様 27
ずっと昔、神様は人間をおつくりになって使命を与えました。
しかし人間が言います。
「われわれ人間は牙も、翼も、鱗も、角ももたず、あまりにか弱い。これでは神様の使命を果たすことができません」
神様がいいます。
「始める前から弱音を吐くとはお前たちの弱さはその心にあるようだ。しかしよかろう、使命を果たそうという意思があるのなら、いつか誰かが得たわざを使えるようになる力を授けよう」
人間がいいます。
「われわれの多くは凡百で、英雄のわざを得ても生かすことができません。これでは神様の使命を果たすことができません」
神様がいいます。
「なるほど確かに凡百だ。ならば英雄の生き方に近づくための力を授けよう」
こうして人間は神様に【スキル】と【クラス】の力を授けられました。
人間は強大な力を得たとと喜びました。
しかし、いざ力を振るおうとすると人間はか弱いままでした。
人間は神様に尋ねます。
「神様、我々は力を得たのではないのですか」
神様はいいます。
「お前たちが得たのは努力すればかつての誰かに、そして英雄に追いつくことができるという力である。力を振るいたいのなら、それだけの努力を積むがいい。そして新たな力を手に入れ、使命を果たせ」
こうして人間は努力すれば報われるようになりました。
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「命は他の命を糧にして生きる……この世界の生物は、他の生物の命を奪うと強くなる。人間はそれに加えて【クラス】と【スキル】を持っている」
魔術王国サモンサでは信仰は盛んではない。
初代王が魔術こそ真理であると宣言し、実力をもってこれを証明したために、神殿とは国ごと距離を取っているからだ。
神官は絵空事をまじめな顔して吹聴して回る夢想主義者扱いだ。
神話も、過去の時代の想像の産物とされ、趣味人かその夢想主義者くらいしか気にされないものとなっている。
「おとぎ話?」
「まあ、そうなるよねぇ」
やっぱりこの辺りはおかしいんだよねなどと、うさみがもごもごとつぶやく。
メルエールはいきなり夢物語の話をされて訝しく思った。
「あんた神官なの? あーいや、それより、あたしの問題っていうのはどうなったのよ」
「神官じゃないよ。知ってるだけ。まあ聞いて」
話を急ぐメルエールをうさみが制す。
「メルちゃん様は【戦士】の【クラス】についていて、学院の他の人たちは【魔術使い】かそれに近い【クラス】についているんだ。これが一点。もうひとつは、メルちゃん様は何かを殺して強くなっているけれど、他の人は殺したことがないか、メルちゃん様より強さが低いんだ」
「んん? よくわからないわ」
専門用語を並びたてられても困る。
それにメルエールが戦士でなにが問題なのか。同級生が魔術使いで……。
メルエールはピンときた。
「もしかして、そのクラスとかいうのが魔術使いだったら魔術がうまく使えるわけ?」
「そう。うまくできるし、成長も早くなるんだよ。【クラス】はね、関係するスキルの習得や成長を補助してくれるものなんだ。それだけじゃなく、体や心の能力も補助してくれる」
うさみの言葉にメルエールは頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。
「それじゃあ、あたしは戦士だから」
「そう。【戦士】は武器を使って戦うための【クラス】だから、魔術の助けにはならない。【魔術使い】と比べて魔力は半分以下。その代わり力や体力が高くなる」
それは。
「……つまりあたしは魔術士としての才能がないってこと……?」
「いやそんなことはないけど」
愕然としながらつぶやいた言葉を即座に否定され、メルエールはうさみをにらんだ。
しかしうさみは相変わらず平気な顔で。
「さっきも言ったでしょ。まあ普通だって。【クラス】と才能は直接的には関係ないから」
メルエールは意味が分からなかった。
成長が不利。
そして魔力も少ないというのならなら練習できる回数も少なるなるわけである。
他の人の何倍も練習して補完することもできない。
それは才能がないということじゃないのか。
「まあ最後まで聞いてよ。悪い話はまだあるんだ」
「まだあるの?」
これ以上悪い話がある?
メルエールは泣きたくなってきた。