ゾンビ初心者うさみ 35
「アンデッドはいるだけで不快になるんだから、いなくなったらすっきりするのは道理じゃないのかしら」
「今回までアンデッドとは戦ったことがないのでわかりかねるでありますが、まだ下にいっぱいいるので何とも」
外壁上はともかく、地上にはまだたくさんのゾンビがうごめいている。
これらに対して嫌悪感を覚えるのはみんな同じようだった。
となればそういうふうになっている、と考えられるかもしれない。
つまりアンデッドは人類の敵として定められているとか。
考えすぎか、仮にそうであっても関係ないか。
うさみはぷるぷると顔を振って気持ちを切り替えようとしたが、それはそれとして気分が悪いのはそのままだったのでうっぷ。
吐き気を飲み下してから、うさみは、戦場からここまで同道してきたみんなに向かい語り掛けた。
「えっと。とりあえず王都にはたどり着いて、ひとまずこの場この時は安全確保したけれど、まあこれで解散とはいかないよね」
外壁上の敵は排除し侵入経路も制限したが、街の中も外も地上はゾンビが腐るほどいる。というか腐っている。
また、安全確保とは言うものの、孤立しているので、うさみがいなければ離脱もできない。
近辺のゾンビをすべて排除すれば別だが、戦えば寄ってくるので切りがないだろう。
「ここはゆっくり休むにも向いていないし、王都内に生存者が集まってるところがあるからそこと接触して可能なら合流するってことで」
屋根もないし、腐臭がここまで届くし、食料の調達もできないため本当に一時的なものである。
生き残りは数人規模が複数、三十人ほどが一つ、百人ほどが一つ。
この中で一番多いところに接触してみようとうさみは考えていた。
「向こうが合流を拒んだ場合はどうなる?」
「それはその時考えるかな。でもまあ、多分大丈夫じゃないかなと」
集まっている位置に心当たりがあった。
それはつまり、出オチ伯爵の屋敷があった場所である。
街の四分の一ほどを覆う枝ぶりの巨大な樹の中心付近であり、内部での移動範囲がなかなかに広くゾンビも侵入できていない。
そしてこの巨樹は、うさみが戦場横の森で結界を張るのに使った木と同種であって、またそれがここまで巨大に、しかも短時間で育つことはまずない。
そう考えると、うさみが助けて協力してきたエルプリがいるはずだ。
ならなんとかなるかなだろう。
この時、うさみは今後についていくつかのパターンの段取りを考えていたが、エルプリとの交渉ならばと軽く考えていた。




