ゾンビ初心者うさみ 14
「今から暗くなるまで寝るから、そのあと夜半までゾンビとか来ないように見張りするよ。後半は交代お願いしたいんだけど」
うさみは夜間の見張りに名乗り出た。
二交代で、後半は希望者を募った。
アップルや黒犬さんなどは、明日以降も戦力として期待っしているので今日は優先して休んでもらいたい、として選外。
うさみ以外のエルフ組も移動中の見張りを期待したいので今日はなしで、と注文を付けたところ。
移動中なんとなくできていたグループのうち、この村まで同道してこの先で別れる予定だった人たちが手を上げた。
中に、むしろ是非やらせてくれ、と主張する者がいたのでじゃあよろしくということになった。
「じゃあ、日があるうちに明日の準備してね。日が出たら出発したいから。おやすみ」
と言って、うさみは隅っこの天幕でさっさと横になった。
残された者たちは、それぞれ動いて食料や戦争用の物資から使えそうなもの、村の中の金品や日用品を集め、分配して荷物をまとめる作業をしていたのでうるさかったが、気にすることもなく、たっぷり睡眠をとった。
時間加速の魔法で十倍速にしていたので十時間相当。
実のところ、最後の手段もあるので、無理に寝なくてもいいのだけれど。
周りの人が気にして怪しんだり気を使ったりされると面倒ごとが増えるし、それはそれとしてゆっくり休む方が気持ちいいので、どうしても必要な時以外はちゃんと寝るのだ。
というわけですやすや。
そして日が沈み、うさみは目を覚ます。
広場の中央で火を焚いており、食事を配っていたのでありがたくいただく。
そして三々五々寝る体制に入る人たち。
小さな話し声。
泣き声も聞こえる。
遠くから響くおそらくは戦闘音。
そんななか、うさみは見張りにつく。
うさみ、黒犬さん、アップル、奇襲部隊だった百名弱、村にいた四名。
あまり広くない礼拝堂とその前の広場に張れるだけ張った天幕に分かれて一夜を明かすことになる。
見張りの効率を考えれば、結界の中で一番高い場所、礼拝堂の屋根に上った。
神様はもういないことを踏まえても、地球時代の感性もあって、こういった施設の上に土足で上がるのはちょっと気が引けるのだけれど、視界が通らないと始まらないので仕方がない。
戦場方面の空が赤い。
火竜王と不死者の王の戦いがまだ続いている。
あっという間に終わらないくらい不死者の王が厄介なのだろう。
ちょっとだけ責任感じないでもないが、もう割り切るしかない。すぎたこと。
とりあえず王都まで行って、エルプリの無事を確認して、あとは流れで。
そのためにも、今夜中に探知魔法を完成させておきたいところだ。
あとは何が必要だろうか。
回復魔法もあるといいが、実験台、うーん。
こうして、うさみがいろいろと考えながら、試作魔法を仮組したりテストしたり使ってみたりという、楽しい時間を現実逃避しつつもすごしていたところ。
「こんなところにいたの、うさみちゃん」
アップルがやってきたのだった。




